前回(第5回「『団塊・シニア向け商品』が売れないのはなぜ?」)、団塊・シニア向けと銘打った商品が売れないのは、「顧客の好み」と「提供される商品・サービスの内容」とのギャップが理由であることが多いとお話ししました。今回はある手法により、両者を一致させている例をご紹介しましょう。
事業主体と顧客が一体化した
新しいビジネスモデル
アメリカでは、リタイアメント・コミュニティの事業主体をNPOにすることが、しばしばあります。このNPO設立・運営の主体が、多くの場合、入居者自身なのです。
このやり方のメリットは、入居者がその施設仕様の決定過程に参加できるため、入居者の好みと商品である施設の内容が一致することです。そうしたプロセスを踏んだ施設ですから、施設が完成した後に多少気に入らないところがあっても、それが自分たちの選択の結果ならば仕方がないと、我慢する気にもなれるのです。
これと同様にこうした事業主体と顧客とが一体となって、商品開発に顧客の声が反映されている例として「パルシステム生活協同組合連合会」が挙げられます。
これは2005年6月以前まで首都圏コープ連合と呼ばれていた団体で、東京マイコープ、神奈川ゆめコープなど首都圏の9つの生協の連合体です。パルシステムと呼ばれる個人対応型無店舗販売による産直、無添加の農産物、食品の販売が特徴で、2005年10月現在で46万人がこのシステムで実際に食品を購入しています。
生協の組合員は顧客であり、出資者でもあります。この意味で前述のリタイアメント・コミュニティ運営のNPOと似ています。
この組織においても、「顧客参加型」の商品開発が頻繁に見られます。
組合員中心の「サポーターグループ」が、商品担当者と一緒に意見や要望を出し合い、生産者や製造業者とも協力しながら、新しい商品を開発します。サポーターグループ制度は、2002年度から始まりました。組合員のサポーターグループへの登録は2004年度で150人。これまでの活動で25の商品が開発されました。