ソチオリンピックが開幕したが、日本のファンにとっては競技開始初日から大きな見どころがあった。フリースタイルスキー・モーグル・上村愛子の悲願のメダル獲得がかかったシーンである。
採点競技ならではの勝負の綾
メダルにあと一歩だった上村愛子
上村はこれまで4度の五輪に出場。順位を7位―6位―5位―4位とひとつずつ上げてきた。手が届きそうで届かないメダル。それを獲得するために「これが最後の挑戦」とソチ五輪に挑んだ。予選を7位で通過し、決勝に進出。決勝は1回目20人から始まり、勝ち残り12人が2回目を滑って6人に絞られ、3回目で順位が決まる。上村は1回目9位で通過、2回目6位でギリギリ通過、そして最後の3回目に臨んだ。
1番目に滑った上村は果敢に攻め、ほぼベストの滑りを見せた。得点は20.66。残る5人のうち、3人がこの得点を上まわらなければメダル獲得となる。2人目、3人目は上村の得点に届かなかった。4人目のジャスティン・デュフォーラポイント、5人目のクロエ・デュフォーラポイント(ともにカナダ)には抜かれ、残るはハナ・カーニー(アメリカ)ひとり。そのカーニーは第1エア後のターンで体が振られるミスをした。後は無難にまとめたが、ベストの滑りではなかったことは確かだ。カーニーの得点が発表されるまでの数十秒間はハラハラドキドキ。そして表示された得点は21.49。またしても上村はメダルに届かなかった。
このジャッジには日本だけでなく、世界からも疑問の声が出ているようだ。ミスなしの上村の得点を、1度ミスをしたカーニーがなぜ上まわるのか、と。
こうしたところが採点競技の難しいところだろう。同じ採点競技のフィギュアスケートの荒川静香氏(トリノ五輪金メダリスト)がジャッジについて、こんなことを語っている。「得点は本番の演技だけでなく過去の実績が加味されることがあるんです」。
採点者には実績を積み重ねてきた選手に対し「強い」という刷り込みがある。難しい技ができて当然という期待値もある。本番のパフォーマンスにそれが微妙に加点されるというわけだ。カーニーは前回のバンクーバー大会の金メダリストであり、昨シーズンはワールドカップで10戦6勝、世界選手権も制している。モーグルの女王とも呼ばれ、今大会でも優勝候補の筆頭だった。対する上村は昨季はW杯で3位が2度、世界選手権も5位だった。ベテランということで知名度はあるものの、カーニーに比べれば格下のイメージがある。