不機嫌な職場の増加に伴い、社員の“人間力”という言葉が企業で唱えられるようになりました。

 しかし、「人間力はどうやって高めたらいいのか」「そもそも企業が人間力など高めることができるのか」という意見も多いと思います。そこで今回は、社員の“人間力向上”に情熱を燃やし、非常に高い労働満足度や職場へのコミットメント度を実現して、好調な業績を続けている会社を1つのケースとして観察してみましょう。

 それは、バグジーという会社です。同社は、北九州市を中心に8店舗を経営する美容室チェーン。実は、名だたる大企業までもがその経営の仕組みをベンチマークし、視察に訪れるほど注目されている美容室なのです。

 同社の久保華図八代表取締役社長は、今や全国のセミナーで引っ張りダコ状態。私は数年前から個人的なお付き合いをさせていただき、バグジーの様々な取り組みを教えていただきましたが、氏の話はまさに新鮮な驚きの連続です。

 といっても、最初から順風満帆だったわけではないようです。アメリカ帰りの久保氏は、自称“成果主義の権化”でした。「勝てば官軍、負ければ賊軍」を地で行く経営をしていたのです。

 しかし、ある日、その経営スタイルについて行けず、幹部3人が次々と退職。続いて社員も大半が退職し、会社は一気に倒産寸前の状態に陥ってしまいました。
 
 久保氏はこれをきっかけに、経営スタイルを180度転換することを決意します。“社員満足”を徹底追求する会社にしたのです。「利より信」という言葉を理念にした、売り上げよりも社員を大切にする経営です。

 その結果、業績は毎年対前年比2ケタの伸び率で成長。お客様のリピート率なども、「業界では奇跡的」と言われる数値を実現するまでになりました。

 そのユニークな取り組みは多岐に渡っています。全部紹介したいくらいですが、今回は久保氏が一番力を入れているといっても過言ではない“社員の人間力向上”への取り組みを、詳しく紹介しましょう。