昇進・昇格を目指す上り坂の働き方はわかっていても、上手な下り方は誰も教えない。筆者の考える上手な下山とは、以下のような一連の流れのことだ。

*時期がきたら、現実の職位や肩書きを返上し未練を残さず、新たな役割を前向きに受け入れる

*新たな仕事に就いたら、経験や能力の強みを活かせる限りは活かし、不足は素直に学びなおす

*下山中、自己を活かせる場があることを感謝し、出向や応援仕事など“途中の寄り道”も楽しみながら麓に下りていく

*下山ではあるが、山を極めた自分の歩みに充実感を感じながら、65歳までのセカンドキャリアの10年前後を「職業人生の統合期・完成期」と捉え、生涯自分を活かすプロフェッショナルな専門領域とパーソナルスキルを作る

*在社中は貢献意欲と役立ち感を失わず、退社=下山後はまた新たに登る丘を探し70歳位まで元気に頑張る――こころの内は、下山ではなく「坂の上の坂」を歩み続ける気持ちだろう

“下山過程”でも給与以上の働きは当たり前
上手な下山プランを実践できた営業部長

 シニアの蓄積した経験と能力、人脈は下山の過程でも、なお十分活用することができるし、下山過程であっても給与以上の働きをしてもらわなくては、あまりにもったいない。企業としては、下山のステージごとの活用方針や役割付与と同時に、シニア個人に対して、様々な下山のステージでも自己の役割に意義を見出し、最後まで貢献させたいものだ。

 企業貢献を忘れない上手な下山のさせ方の一例として、ある大手IT系販売会社の営業部長のケースを紹介しておこう。

(1)下山の予告:役定・定年の2年前55歳の研修時に、制度適用とその後の役割・仕事・働き方の変化とその対応の仕方などキャリアデザインに関することと、退職金・年金の案内をし、75歳位までのライフプランを作成させた。研修後、上司と、肩書返上後の役割と働き方への期待など今後の上手な下山プランが話し合われた。

(2)下山のステージと仕事想定:一貫して過去の営業経験が生かせる仕事に就けた。

 1)役定後57歳から定年までの3年=経験・スキル・人脈を活かして営業。スキルは多少の補強をしながら、現場人材として即戦力活用できる仕事に就かせることを想定した。

 *部長職から部付き担当部長として、3年間、特定大口取引先を担当。年収は部長職時の75%・700万程度に。人脈を活かした営業で期待レベル以上の成果をあげた。

 2)定年から再雇用前半63歳くらいまでの3年間=おなじ仕事で期待の程度をやや下げた目標で引き続き働いてもらった。

 *担当部長からお客様担当に。仕事の成果目標は3割程度低めで設定。年収は退職時の60%・400万相当に。目標にこだわり予算は達成、若手の同行も喜んで実践。

 3)再雇用後半63歳から65歳までの2年間=体力的に少ししんどさを訴えてきたので、仕事はフォロー営業専門担当として、週3日勤務で働いてもらうようにした。

 *仕事は既存顧客中心のフォロー。仕事の量は4割程度低めで設定。年収も前時期フルタイムの60%・250万円程度に。きめ細かな訪問で顧客との関係維持ができた。