「米国の景気は底を打ったのではないか?」
最近、株式市場の投資家のあいだで、こんな声が広まっている。
昨年9月のリーマン・ショック以降、米国経済はまるで坂道を転げ落ちるように悪化を続けて来た。金融危機は、欧州、日本などの先進国ばかりか、中国をはじめとする新興国にも飛び火し、世界同時不況を引き起こした。
震源地となった米国景気の落ち込みぶりは、すさまじい。2008年10-12月期の実質GDP成長率は、年率換算で前期比▲6.3%と、27年ぶりの大幅マイナスに陥った。直近09年1-3月期(速報値)も同▲6.1%と、34年ぶりとなる「3四半期連続マイナス成長」を続けている。
「米国経済はまさに泥沼。少なくとも09年中の好転は見込めそうもない」――。サジを投げた投資家は、市場から資金を一斉に引き上げ、長らく“模様眺め”に徹していた。
ところがここに来て、そんなマーケットに久々の変化が訪れているという。「お客のリスク志向が再び高まり始めた」と語るのは、瀬川剛・みずほ証券投資情報部エクイティストラテジストだ。
確かに、そういった傾向は見られる。リーマン・ショック以降、暴落を繰り返したNYダウ平均株価は、春先を底に上昇に転じ、直近では8500ドル台を回復している。
勢いづいた投資マネーは、瞬く間に諸外国のマーケットにも向かった。日経平均株価は5月上旬に9000円台を回復、ロシアやブラジルなどの新興国に至っては、年初から2ケタ近くも上昇しているほどだ。
変化が起きているのは、為替市場も同じだ。これまで「有事の安全資産」として円やユーロに対して高止まりを続けていた米ドルも、投資家の持ち高がみるみる減り、各国通貨に対して急落している。
「マーケットは景気に対して3ヵ月~6ヵ月ほど先行して動くと言われているため、投資家が米国経済の先行きを強含みに見ていることは明らか」(瀬川ストラテジスト)なのである。
しかし、「100年に一度」とまで言われる大不況の引き金となった米国景気が、そうやすやすと底を打つものだろうか? 米国の動向は世界経済を大きく左右するだけに、市場関係者ならずとも気になるところだ。