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2030年のビジネスモデル

一粒1000円のイチゴをつくる「データ農業」

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第16回】 2014年2月27日
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若い人たちがワクワクするような農業をつくる

 山元町の人口が1万人程度であるのに対し、GRAの園芸施設を訪れる視察者は昨年4千人に達した。さらに今年、岩佐さんは隣接地に、施設園芸の本家オランダを凌ぐ世界一の「超」先端農業施設を建設する予定である。

 この「超」先端農場は展示スペースを装え、国内外からアグリ・ツーリズムも迎え入れる。そうなれば視察者は1万人を超え、山元町には市の定住人口を凌ぐ交流人口が生まれる。町のコンテンツとは関係ない観光施設を誘致したりするのではなく、町のアイデンティティであるイチゴを核にして交流人口を増やし、町を活性化していくべきというのが、岩佐さんの持論だ。

 この4月からは新規就農支援ビジネスも展開する。これまで培ってきたノウハウを提供し、フランチャイズのように拡大していく。「従来のように農家に10年も付いて仕事を覚えるんじゃなく、1年くらいでクイックにノウハウを吸収してもらう」という新しい指導方式を導入する。これによって、GRAは自らの初期投資を回収するとともに、地元雇用の拡大を進めていく考えである。もちろん生産のみならず、6次産業化によって直接、間接に雇用を増やしていきたいと言う。

 「若い人たちの間でソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)が増えているのはすごく嬉しいことですが、産業創造を軸に動いている人が圧倒的に少ないのが残念です。コミュニティーデザインだけでは町は持続可能な豊かさを手に入れることはできません。経済を回すこととコミュニティーを作ることを同時に進めていくことが大事です」

 復興ボランティアで自己満足せず、厳しい経営の眼も持ちながら活動する岩佐さんが、自らの事業を通じて、最終的に示そうとしていることは何か。岩佐さんは究極の狙いを次のように語った。

 「若い農業従事者がワクワクするようなビジネスをこれから見せていきたい」

 GRAの目標は、10年以内に100社の企業化又は農業を継ぐ人が現れること、そして1万人の雇用をつくることである。それは大きな夢だが、震災から三年、GRAの展開がまさに電光石火のスピードだったことを振り返れば、これからにも大いに期待し、エールを送りたい。

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齊藤義明
[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

2030年のビジネスモデル

未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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