商品力に富んだ日本農業がなぜ苦境に陥っているのか。一つの大きな要因は「農業がビジネス化されていない」ことにある。儲からない産業にはヒトもモノもカネも集まらない。日本農業を復活させるには、儲かる産業に変えることが重要命題だ。
日本農業復活への道
東京大学農学部国際開発農学専修卒業、東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻修了。現在、株式会社日本総合研究所創発戦略センター主任研究員、グローバル農業チームリーダー。農産物のブランド化に関するベンチャー企業の立上げに参画。主な著書に『グローバル農業ビジネス』、『次世代農業ビジネス』(以上、日刊工業新聞社)、『甦る農業―セミプレミアム農産物と流通改革が農業を救う』(学陽書房)ほか
今回の総選挙では、TPP(環太平洋経済連携協定)が争点の一つとなっている。TPP反対派は関税がなくなれば、日本の農業は壊滅的な打撃を受けると主張する。だが、日本農業は産業として、それほど弱いものなのだろうか。
筆者はこれまで全国各地の農村地域の方と一緒に、日本農業の再浮上のためのプロジェクトを展開してきた。農産物の持つストーリー性を活かしたブランド化、価値を伝えるダイレクト流通、植物工場や農業ICTといった先端技術を使ったハイテク農業、海外の富裕層を狙った農産物輸出、新興国の農業企業に技術をのれん分けする「日本式農業」など、いろいろな挑戦を行い、トライ&エラーを繰り返してきた。
本連載では、日本の農業がTPPを契機に再び脚光を浴びるなか、こうした実践の経験を踏まえ、日本農業復活の道を模索し、提案したい。第1回目の今回は、日本農業が抱える問題の本質を整理したうえで、連載の各テーマを提示する。