お名前を挙げるのは控えますが、ネット上のまとめサイト等を見ると、旧帝大出身の著名な芥川賞作家を始めとする、数々のオピニオンリーダーと言われる人たちがネット上で憂慮や批判を表明していたようです。

 しかし、ふたを開けてみると、10月31日に出てきた提言書には、学力試験廃止の文言はなく、検討されたような形跡もありませんでした。毎日新聞の記者は何を根拠に書いたのか、首をかしげたくなるばかりです。

 結果的に、根本的に間違った記事を元にひたすら不毛な議論がネット上で展開されてしまったわけです。インテリジェンスの基本は1次情報に当たることであることを、この事例は示しています。

誤報の背景は
記者の思い込み!?

 入試改革論議をミスリードする記事が出てきた背景に何があるのでしょうか?

 一部マスコミは「受験戦争」と呼ばれた時代から長年、大学入試に批判的な論調を展開してきました。「知識偏重は良くない」というスタンスです。

 ところが、これも全ての大学入試が詰め込み式だという思いこみに基づいていないでしょうか。大学入試を批評する以上、記者たるもの国立大学の二次試験の実物を見ておくべきでしょう。私は40年分の東大、京大入試を見ていますが、国語も数学も社会も論述式の「良問」揃いだと思います。

 たとえば世界史。昨年度は、大西洋からインド洋、太平洋にかけての交易活動を取り上げ、各地の開発や人の移動に着目。人の移動と軋轢について、奴隷制廃止前後の差異も含めて論じさせています。受験生は、与えられた8つのキーワードを駆使して「原稿用紙」型の回答用紙に書き込んでいきます。

 今年の京都大学経済学部の論文は秀逸です。さすがに良問の京大。M.フリードマン「実証的経済学の方法と展開」の一部と、G.M.ホジソン「現代制度派経済学宣言」の一部を読ませて、それぞれの論旨の要約と、ホジソンからのフリードマン批判に対して、フリードマンの主張を裏付ける具体例を示しながら、それを擁護しろ、というものです。あまりにも、見事な問題で唸ってしまいます。