2012年にOECDが実施した「生徒の学習到達度調査」(PISA)の結果が昨年12月に発表され、日本の子どもの学力が復活を遂げたことが話題になった。「ゆとり教育」のピーク時に同調査での順位が低迷していたこともあり、今回の学力向上を「ゆとり教育の見直しによる成果」と言う人もいる。しかし、話はそう単純ではない。教育関係者や識者に話を聞くと、「そうではない」という声が多数上がると共に、改めてゆとり教育を評価する声も少なくないのだ。いったいこれはなぜか。「ゆとり教育悪玉論」の読者にも、ぜひ知ってほしい取材結果をお伝えしよう。(取材・文/プレスラボ・小川たまか)

ようやくゆとり教育の弊害が払拭された?
OECD学力調査で日本の順位が堅調に改善

「やっと、ゆとり教育の弊害が払拭されつつある」

 筆者は最近、こんな声を耳にすることがある。それは、昨年12月に発表された、OECD(経済協力開発機構)が実施する「生徒の学習到達度調査」(PISA=ピザ)の結果発表を受けてのものだ。

 PISAは2000年からスタートした調査で、3年に1度行われている。世界の15歳の男女を対象に、「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」「読解力」の3科目で義務教育の習得度を測る調査だ。5回目にあたる2012年調査には、OECDに加盟する34ヵ国のほか、65の国と地域から約51万人が参加した。このテストで、国際的に見て日本が順位を上げたこと、3分野全てで点数が向上したことが明らかになり、教育界の明るいニュースとして受け止められたのである。

 前回2009年の成績と比べると、平均得点は数学的リテラシーが539点で9位から7位へ、科学的リテラシーが547点で5位から4位へ、読解力が538点で8位から4位へと上昇した。

 初回となる2000年、日本のPISAのランクは数学的リテラシー1位、科学的リテラシー2位、読解力8位だったが、その後2003年調査、2006年調査で連続ダウン。特に2006年調査での順位の下落ぶりは顕著であり、数学的リテラシーが同6位から10位へ、科学的リテラシーが同2位から6位へ、読解力が同14位から15位へとダウンした。2003年時に、日本は「世界トップレベルとは言えない状況」という烙印を押されている(ただし、当時と現在とでは参加国数や調査実施科目数が異なることもあり、単純比較はできないことを考慮する必要はある)。