「とうてい納得できるものではない」――。

 厚生労働省が9月17日に公開した、来年6月に施行される改正薬事法・施行規則改正の省令案を見て、日本オンラインドラッグ協会理事長の後藤玄利氏(ケンコーコム社長)は落胆したという。

 改正薬事法では、専門家による適切な情報提供を行なうため、一般用医薬品(医師の処方箋がなくても、薬局などで自由に買える医薬品)を、「特にリスクの高い」第一類から「リスクが比較的低い」第三類までの三区分に分類する。

 今回の発表で明らかになったのは、第三類以外の医薬品の、インターネットでの販売・授与が認められないこと。対面での情報提供ができないというのがその理由だ。

 第三類にはビタミン剤やうがい薬が含まれるが、風邪薬、胃腸薬や解熱鎮痛剤はいずれも第一類か第二類。現状購入できているルルやガスター10、バファリンなどが、ネット上で購入できなくなるということだ。

 一見するとネット販売でのみ規制が強化される印象を受けるが、実際はそうでもない。

 現行の薬事法では、薬局の構造設備や医薬品などの管理の義務はあっても、購入者や使用者に対して必要な情報を提供する義務は、厳密にはない。「努めなければならない」との表記があるのみ。

 つまり、一般用医薬品の販売は、必ずしも薬剤師が行なう必要はない。だから、厚生労働省は、ドラッグストア店舗での薬剤師不在の実態に気づいていながら、なかなか処置ができなかったのだ。

 しかし、医薬品は効能・効果がある一方で、副作用などのリスクも併せ持つ。情報提供の徹底は必要という“正論”により、今回の改正が行なわれる。「みんな規制強化をのんでいる」(関係者)のだ。

 少子高齢化が進むなか、自身の健康に責任を持ち、軽度な不調は自分で治療しようという「セルフメディケーション」に注目が集まる。それに呼応するようにして、国全体の医療費削減をメドに、一般用医薬品販売での競争が促進されるはずだった改正薬事法。

 しかし現状の流れでは、参入障壁が高くなり、新規参入者のネット業者の扱い品目が減らされ、既存のドラッグストアや薬局を利するものとなる。

 今後、不足が懸念される薬剤師をすでに抱え、その教育システムを持つ既存勢力にとって、一連の動きはすべて吉と出ている。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 新井美江子 )