朝9時から開いている、鯉とうなぎの「まるます家」。呑ん兵衛好みのする酒場が数多い赤羽の地でも、昭和25(1950)年創業のこの店は老舗中の老舗。店内は「コの字」型2連のカウンターに、テーブル席が数卓。2階には座敷席もあります。

 まずは小瓶のビール(サッポロ黒ラベル、350円)と、この店自慢の鯉の洗い(400円)を注文すると、カウンターを担当するおかあさんが、

 「はいこちら、ビールと洗いね」

 と、まるで謡うような軽快な調子で、注文を受けてくれます。おかあさんたちの元気あふれる働きぶりも、この店の名物のひとつなのです。

 毎朝、その日使う分を店頭でさばくという鯉の洗いを、添えられた酢味噌でいただきます。ピンクに透きとおる美しい洗いは、シャッキリと身の締りもよく、淡白な中にも力強さを感じる味わい。

 これには、やはり燗酒ですね。ちょうどビールも飲み終わったので、「富久娘」の燗酒(350円)を注文すると、元気なおかあさんから、

 「はいっ、カワイコちゃん、ホットで一丁ぉ~っ!」

 と、謡うように注文が通されます。カワイコちゃんというのが、この店での「富久娘」の符丁なんですね。