深刻化する景気後退が、ビール系飲料市場にも影を落としている。割安な新ジャンル、いわゆる第3のビールが大幅に販売量を増やす一方で、割高なビールが販売量を落とす「カテゴリーシフト」が急速に進んでいるのだ。
今年1~3月、ビール系飲料の課税出荷数量は大手5社合計で前年同期比3.6%減。8四半期連続で前年実績割れとなり、四半期ベースの出荷量合計では過去2番目に少ない。
ところが、新ジャンルだけは29.5%増と絶好調。反面、ビールが11%減、発泡酒ですら15%減となった。消費者の節約志向が歴然だ。
節約志向のとばっちりを受けたのが、業界トップのアサヒビール。販売量の約6割を依存する大黒柱「スーパードライ」がビール不振の逆風を受けた。新ジャンルの「クリアアサヒ」が大ヒットしたが、販売量全体では0.3%減と苦戦を強いられている。
かたやアサヒを追撃するキリンビールは、新ジャンルで約5割のシェアを握る「のどごし」が前年同期比で16%増となるなど、得意の新ジャンル、発泡酒でシェアをさらに拡大。販売量全体で1.3%増となった。
この結果、キリンは2年ぶりにアサヒを抜いて首位に返り咲いた。このままカテゴリーシフトが進めば、昨年まで8年続いたアサヒの年間シェアトップの座に赤信号がともることになる。
3位のサントリーと4位のサッポロビールのシェア争いも激しい。昨年2~4月、大手各社はこぞって値上げに踏み切ったが、サントリーだけは缶入り商品価格を8月まで据え置く「安売り戦略」でシェアを伸ばし、サッポロを逆転して3位にのし上がった。だが、今シーズンはサッポロも負けていない。ビールの売り上げは減少したが、新ジャンルの新商品を相次いで投入し、サントリーとの差を0.2ポイントまで縮めている。
市場縮小とカテゴリーシフトが進むなかで、夏商戦もひと波乱ありそうな気配だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小出康成)