Photo by Takeshi Yamamoto
降圧剤「ディオバン」の不正論文問題で揺れるノバルティス ファーマ。そのディオバンにさらなる危機が訪れる。2013年にディオバンの国内特許が切れ、同じ有効成分のジェネリック医薬品(後発品)が登場するのだ。
厚生労働省が2月14日に承認したディオバン(一般名・バルサルタン)の後発品は、なんと34社140品目にも上った。後発品専業メーカーのみならず、ファイザーや、サノフィの日本法人、田辺三菱製薬といった大手新薬メーカーも承認を取得している。
6月に後発品の公的な価格が決まり次第、販売が開始されるが、なぜ、これほど多くの製薬会社が参入するのか。
狙われる1000億円市場
「ディオバンの降圧効果そのものに偽りがあったわけではないので、いまも多くの患者に使われている」と製薬大手の幹部は言う。ディオバンはピーク時の09年に1400億円(国内)、12年まで年1000億円超を売り上げてきた。論文問題が発覚した13年ですら943億円だ。
ある後発品メーカーの関係者は「ノバルティスという企業に対する世間の目は厳しい。仕方なくディオバンを使っていた医療機関で後発品への切り替えが進む」と皮算用する。
後発品が攻め入っても、ノバルティスは大っぴらには防戦できない状況にある。
新薬を発売する先発品メーカーは通常、主力製品の特許切れ対策として、適応症を追加したり、新しい剤型を販売して製品価値を最大化する。その上で、先行している製品の知名度を生かしてMR(医薬情報担当者)が販売促進を行い、製品の“延命”を図る。