「どういう意味?」

「まあ、ちょっと言い方は悪いかもしれないですが、要は、相手に関心を持ってもらい、こちらの考える通りに行動してもらう、というか。競合会社より高くても買ってもらうには、何もなくても訪問して、課題をもらえる間柄になることが大事。そんなことから、こちらに有利な情報をもらえるというような関係になることが、営業の生命線だ、ということです」

 客は教育するものだ、というのは、Sさん一流のレトリックなのでしょう。

 H.K氏の語ることには、記者だった私にも似た記憶があります。

 取材する記者と、受ける企業、受ける相手の関係は、攻める者と守る者という関係では必ずしもありません。上下関係でもない。

「取材相手から何かを頼まれたときには、何を措いても協力してあげろ」

 新人時代に先輩にそう教えられました。

 それは欲しがっているデータや資料を提供するとか、人を紹介するとか、ライバル企業の情報を提供するとか、内容は多岐にわたりましたが、私は極力、それを実現しようとしました。

 それによって相手との信頼関係が強くなり、こちらの頼みも聞いてくれるようになる。そんな相手を増やすことが、記者の生命線と言えます。

「俺には、なんでも売れる」
その言葉の真意とは

 Sさんは、医薬品会社から自動車メーカーに転職しましたが、「俺には、なんだって売れる」と豪語していたそうです。

「営業に同行しても、商品の説明は、あまりしないんです。世間話をしながら関係を深めるというか、維持するというか。営業は自分を売り込む、とよく言われますが、まさにそういう姿勢だったんでしょう」