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リサーチ
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時季的な話なのか、近頃の極端な天候のせいなのか、それとも、春が近づくにつれて活力がみなぎるせいなのか? 最近、ITのコスト管理を見直したいという、クライアントが続々と電話をかけてくる。彼らがコスト削減の対象としているのはソフトウェアだ。
多くの場合彼らはまず、“ソフトウェアライセンスのリサイクル”を思いつく。インストールされているにもかかわらず使われていないソフトウェアをアンインストールして、別の場所に再インストールすれば、きっとコストが削減できると考える。
さらにこうも考える――「どうやらIT資産管理なるものを行わねばならないらしい……」。ただ、少々手強そうにみえるので、この分野への理解を深めたいと電話をかけてくるわけだ。
素晴らしいことではないか。
より多くの人々がSAM(ソフトウェア資産管理)に関心を持つようになったのは、私としてはとても喜ばしいことだ。そうした関心にはいずれ社内政治的な思惑が絡み、結果としてより多くの投資につながることになる。
ただし、依然としてこの課題に対してスキルのある人材は不足しているが、もし、SAMへの投資(テクノロジーのみならず、人材やプロセスについても)を増やすことができれば、利用可能なIT資源をプールすることができるだろう。
SAMがもたらす価値は、単なるITの機能にあるのではなく、財務規律にあることを十分に理解することが、SAMが組織全体に浸透するまでに成熟した組織への道筋となる。
しかし……。
物事には常に、「しかし」が存在する。
・単純に、ソフトウェアのリサイクル(お好みであれば“二毛作”と言ってもいい)ができるとは限らない。どのようなライセンス形態なのかを把握し、ライセンスの割り当てや削除、再割り当てが可能なのか、EULA(使用許諾契約)の規約や条件(すべて同じものというわけではない)と照らし合わせる必要がある。さらに、「費用を負担したんだから、私のものだ。なぜそれを他人に譲らなければいけないんだ?」といった社内の不平不満にも対応しなければならない。SAMをゼロから検討する場合、リサイクルは必ずしもクイックウィンにはつながらないのだ。
・SAMでコストは削減されない。しかしSAMによって、ビジネスの意思決定において有益なデータが数多く手に入る。もし保守サポートの更新や余剰インストールに多額の費用を浪費しているなら、SAMによってコスト削減の機会を特定できる。ただし、コンプライアンス面のリスク軽減のために費用を投じるべき領域もあると気づかされるだろう。とはいえ、それらすべてがSAMの役割なのだ。SAMが特定するリスクと機会は、組織が情報を駆使することでやれることを左右するだろう……。