CDOの登用は、“急がば回れ”

ピーター・ソンダーガード
ガートナー
シニア・
バイス・
プレジデント
リサーチ部門
最高責任者

 同僚でありガートナー フェローのケン・マッギーが最近新たに発表したリサーチでは、CEOが一般的にどのようにしてCDO(最高デジタル責任者)を採用しているのかについて考察している。社内からの登用や推薦の実態は、外からは分かりにくく把握するのは難しい。しかしケンは、ベテランの採用エージェントに話を聞くことにより、多くのことを突き止めた。

 ケンのリサーチには興味深い点がいくつかあるが、特に私にとって驚きだったことが1つある。

 だいたい、経営幹部を探そうという場合、クライアント企業は、その要求仕様を明確に持っているものだ。ところが、デジタルビジネスについては、どのような要件が必要かも不明瞭で、CDOが担う目的もあいまいだというのだ。

 言わんとすることが分かりにくいだろうか。つまり、CEOはなぜCDOが必要で、彼らが何をするのか、分かっていないということだ。

 ことは急いだり、あわてふためくようなことではない。 “急がば回れ”でいいのだ。

 デジタルビジネスや、CDOがもたらすメリットについて、経営幹部の理解があいまいであったがゆえに、多くのケースでCDOの採用は貴重な時間を無駄にした結果に終わっている。これでは、デジタルビジネス戦略や、有能なCDOが企業にもたらす価値を心得ている競合企業を利するだけだ。

 では、CEOがすべきことは何だろうか? 簡単に言えば、本末転倒になるなということだ。

 何よりもまず、CEOは会社にデジタルビジネス戦略が必要なのか見極めるべきである。このことは、経営幹部全員が討議する全社的な計画プロセスにおいても、あるいは個々の計画の実行にあたって何ができるかを検討する際にも、よくよく熟考されねばならない重要な議題になる。

 また、結論ははっきり明確なものでなければならない。会社にとってデジタルビジネスが何を意味するのか、経営幹部が自ら見解を示すべきなのだ。

 CIOはその過程において、きわめて重要な役割を担っている。CIOはデジタル化の要点を各経営幹部それぞれに応じて説明し、デジタルビジネスが各事業部長の責任範囲にどのような潜在的な影響力をもたらすのか概略を示す必要がある。これが、ビジネスニーズや潜在的な事業価値への理解を促す基礎となる。これができれば、ビジネス要件も明確になり、CDOの候補者を探すうえでの基礎ともなる。

 ビジネスニーズや幅広い目的が一致して、CDOの役割が明確に定まる以前に、CEOが候補者探しに乗り出そうとしていたら、人事採用の責任者が強く制止すべきである。