『週末は田舎暮らし』の著者で、「平日都会、週末田舎」という暮らし方を実践する馬場未織さんと、人気の不動産サイト「東京R不動産」のディレクターで、自身も二地域居住を経験する吉里裕也さんが、田舎の家のメンテナンスから地域との関わり方、住む場所の選び方まで、田舎暮らしのリアルについて語りました。
スイッチが切り替わり
自然の中で洗濯される感覚
馬場 私の二地域居住のきっかけは子育てだったのですが、吉里さんが房総に拠点を持つようになったきっかけは何でしたか?
吉里 「東京R不動産」を立ち上げてからサーフィンにはまり、トライアスロンやトレイルランニングもするようになり、房総に通うようになったんです。房総なら移動時間が1時間程度で、日帰りも可能です。東京を離れてみると「ああ、自分は疲れているんだな」などと感じられるし、移動することで気持ちもガラッと切り替わる。それがいいと思うようになったんですよね。
馬場 分かります。私も『週末は田舎暮らし』という本に書きましたが、アクアラインを渡るとすっと切り替わる感じがあります。どれほど都会で仕事に追われていたり、人間関係で疲れを感じていても、自然に触れることで自分を取り戻せる感覚がありますよね。
吉里 それから自然と「この辺の土地はいくらぐらいなんだろう」と興味がわくようになり、「房総R不動産」を立ち上げるきっかけにもなった知人と物件を見始めたんです。その後、会社名義で家を購入しました。
この家は、基本的に会社の誰でも使えるようにしていますが、どうしてもメンテナンスが必要になるので、僕が子どもも連れて家族で定期的に通うようにしていて、掃除や草刈りもしています。
馬場 吉里さんと同じく東京R不動産を運営する馬場正尊さん(『「新しい郊外」の家』の著者でもある)も、海の近くにもうひとつの拠点をもっていましたよね。
吉里 馬場さんは千葉に家を持っていますが、実は房総に来たのは、僕が物件を見るようになった1年後くらいです。僕が房総で何かしようよと話をしてから、実は時間がかかってるんです。僕自身は今、二地域居住ではないけれど、居場所が二つあるような感覚は持っています。特に房総にいると、田舎ならではの、洗濯される感じがあると思います。空気も違うし、夜も深いし、音も自然の音しかしない。そういう状況でスイッチが変わる感じがある。たまに行くと昼も夜も、いいなと思います。東京R不動産では新島で民宿「saro」もやっていますが、島に行くとまた違う「島モード」があるんだなと感じます。
馬場 置かれている場所で心のありようが変わりますからね。ちょっとイイ人になれる気がする(笑)。二拠点居住の良さって、ゴールデンウイークとか、お盆時とか、どうにもならない「混雑期」に特に感じません?
吉里 それはある。どこに行っても人が移動していて、特に観光地はどうにもならないし、そうなると僕はなかなか家から出る気にもならないほうなんです。その点、拠点があって移動さえしてしまえば、1週間そこで過ごせるからすごくいい。ただし、初日は掃除や片付けに明け暮れるので、それも含めて、滞在期間は1週間が必要になるんですけどね。