コミュニティにどう溶け込むのかは、
都会も田舎も同じ
馬場 地域での付き合いもいろいろありませんか? 回覧板を持ってくるだけなのに、獲れたての野菜を持ってきてくれたり。
吉里 僕らの家はご近所さんがいるわけではなくて、どちらかというと別荘使いの人が多いエリア。だからご近所づきあいそのものはないけれど、その「野菜をくれる」感じはよくわかります。地元の不動産屋さんに行くと地元のキャベツをくれたり、お金ではないもののやり取りが多い気がしますね。
馬場 そうなんです。実は私にもその感覚があって、友だちが遊びに来てくれると、手ぶらで返したくない! という気持ちになっちゃう。ちょっとこの野菜持って行ってという、お金を介在しないやり取りが生まれるというか。
吉里 海に近い不動産屋の話だと、サーフィンから帰ってきたら、玄関にハマグリがあったなんていうこともあるそうです。
馬場 おお! 海は山とは違うゴージャス感がありますね(笑)。ただ南房総は山側の地域とはいえ海とは近いので、海産物の種類が豊富で安く、東京では買い控えてしまう。
吉里 しかも、その場でさばいてくれるしね。自然の恵みが手に入りやすいのもメリットかな。
馬場 私自身は東京の家と、南房総の家と、もう1つ海の方に……という三地点拠点に憧れるくらい。でも、海沿いは漁村コミュニティが強くて入りにくいとも聞きますが。
吉里 地域によってはあるのかもしれませんが、必ずしもそうではないと思いますよ。僕らのエリアでは感じたことがないですし、移住者コミュニティやサーファーコミュニティ、従来の地元のコミュニティなどがそれぞれにあるけれど、小学校には東京からの移住組が3分の1もいたりするらしいです。子どもが小学校に入学する時点で移住するというケースはよくありますよね。
馬場 なるほど。移住者の課題として、移住者同士が集まりやすいということを感じるんですが、それはどうでしょうね。地元に溶け込まずにいると、東京にいるのと変わらないのではないかと……。
吉里 僕自身は、そういう移住者同士だけで集まるというようなタイプではないので、あまり感じないかな……。もともと“転校生気質”で地元を持っていないことがコンプレックスなくらいなので、ある意味、どこにいってもなじめるんですよ。だから、よく行く店ができれば顔なじみが増えて、移住組の板前さんと知り合いになることもあれば、地元の不動産屋の人とも仲良くなることもある。
馬場 個人差ということですね。
吉里 コミュニティのルールはあるかもしれないけれど、人と人の付き合いで、合う合わないは、地元出身かどうかはさほど関係ないのだと思います。だからこそ、無理はしないことですよね。特に二地域居住でも目的が「住むこと」ではなく「切り替えること」なのであれば、最低限のルール……例えばゴミ出しとか、そういう基本的なことを守って、地域になじめばいいと思います。
馬場 なるほど。移住してそこが生活の場になると、「切り替える」必要もないし、逆に毎日暮らす上での「居心地」を確保しなければならないですもんね。だからこそ、移住者コミュニティも大切になるのかもしれないですね。私は「切り替える」という視点があるからこそ、地元のコミュニティに入って交流したいのかもしれない。
例えば私は、集落のおじさんやおばさんが仲良くなってくれるとすごくうれしくなるのですが、移住すると、ただ地元の人と交流してその土地の良さを広めるというだけでなく、その地域を担っていくという意識がより強くなりそうです。
吉里 基本的には都会も田舎も一緒だと思うんです。あるいはサーフィンのルールにも似ていて、サーフィンは人の邪魔をしない、前乗りしない、ローカルリスペクトというのが基本です。地元以外の海ではアウェイから始まるから、失敗したら謝るし、礼を通す。でも、そのシンプルなことを守ればいい。海なら人がぶつかれば死にもつながるし、それはもう普通のことだと思います。