子どもの成長に合わせて
ライフスタイルをどう変化させていくか
馬場 移住組はどういう職業の人が多いですか? 実は私自身が最近気にしているのは、二地域居住をしている人が、マスコミの人やIT関連の人、あるいは手に職を持っているような“一部の職業の人”に限られてしまっていないかということなんです。そうなると、先の広がりが少ないのかなと心配になってしまうんですが……。
吉里 僕の周りでは、移住組はサーファーが多いですが、イラストレーターなどのフリーランスの人もいれば、出版社の人や広告代理店の人も多いですね。東京で普通に会社員として働いている人ももちろんいます。そもそも1時間半なら通えますよね。僕は神奈川県の横浜出身ですが、父親は片道2時間半かけて通勤していましたし、親世代でそういうサラリーマンは少なくなかったと思います。
馬場 2時間半って、すごい! 毎日小旅行状態じゃないですか!?
吉里 東京出身の人からすると驚くことかもしれないんですが、たぶん、その時代では普通のことだし、いまでもそういう人はいると思います。大阪でも神戸や奈良から通う人もいるくらいですし、何もできないことではないんじゃないかなと。そういう意味では房総は近いほうですよね。この距離感は重要じゃないかと思います。どれだけ疲れても、1時間半なら運転もできるし移動は苦じゃない。
馬場 確かに。私にとっても移動距離は重要でした。本にも書きましたが、「クルマで1時間半」という条件をはじめからつけていました。現実的ですよね、この距離感は。
吉里 ただ、子どもが大きくなると、移動距離の問題って結構大きくなってきますよね。馬場家は、今後はどうするんですか?
馬場 今、長男のニイニは13歳で、末娘のマメは5歳。ということはこの先、いまの暮らしができるのは10年程度ではないかと思っています。今でも、ニイニは土曜日に部活があるけれど来てもらいたいときは、部活を休んでもらっています。それ以外は、土曜日の部活が終わったあと、高速バスで追ってきてもらう(笑)。
たぶん、下の子たちもそういう生活になるのかなと思っています。あとは今後、友だちと遊びたいから行きたくない! という場合には、「友だちを連れておいで」と。大型連休のときにはうちで合宿させるんですが、こうすると圧倒的に楽しくなりますね。
吉里 なるほど。ただ二地域居住をしていても、結局、子どもがいる時点で「学校」というつながりのある「メイン」の場所ができてしまいますよね。その時点で生活が分かれてくる。先ほど話に出ていた、東京R不動産の馬場正尊さんの場合、上の子はもう大学生で、下の子が小さいから、まだいまの二地域居住、平日は都内で働き、都内の家で馬場だけ過ごして、週末は田舎で家族で過ごすという生活が成立しているけれど、今後はどうしていくんだろう、子どもはどういう選択をするんだろうと思うんですよね。
馬場 私自身は、いまのライフスタイルを選んだことに関していえば、子どもがいるからこそ、二地域居住で密な時間を過ごしたかったんだと思います。現時点で、すでに上の子は巣立ちかけている感があって、あぁ、子どもはいずれ巣だっていっちゃうんだなと痛感しているんですね。だからこそ、下の子たちとの時間がまた愛おしい。田舎でなければ過ごせない密な時間があるんです。その記憶を植える作業をしている気がします。
10年後から向こう10年くらいは、夫婦だけの暮らしになるだろうなと思っています。その期間を過ごすための素地作りが大切で、子どもの友だちづくりや地域との関係、自分の趣味……モチベーションを持続させながらどう過ごしていくかを考えますね、最近。ただ、二地域居住をやめるという選択肢はないんです。家族はやめられない。それと同じで、今後は夫婦二人になった時に、どうやったら豊かに過ごせるかということを考えながら、準備していく感じだと思います。幸い、草刈りに畑とやることは限りなくある! あっという間に孫のいる時代が来そうです(笑)。