「雨が降っても自分のせい」

 そうしてなんとかリーマン・ショックを乗り切った2010年、事業が単月黒字となった頃、別なベンチャー・キャピタルからの追加投資が決まった。担当キャピタリストから、「この資金が決まらず、次のステージへの可能性が拓けなかったらどうするつもりだったのか」と問われた金柿は、「そこ(オフィスのベランダーのプランター)に草が生えていますよね。いずれにせよ、あれを食ってでも自分は続ける覚悟ですから」と、けろりとした顔で答えた。リーマン・ショック前後は振り返り、本当に苦しい時期ではあったが、結果として経営者である自分と、会社のスタッフの意識が大きく変わったことが収穫だったと思っている。

「経営者をやっていると、他の何かのせいにすることがなくなる。『部長が悪い』とか『国が悪い』とか、そういうことを一切言わなくなります。もう雨が降っても自分のせいという風に思うことができる。そういう状態になってはじめてOSが完全に入れ替わる。マインドセットが変わる」。

 この頃から、組織体制の強化を考えるようにもなった。まず、遅くまで残業を前提に働くのではなく、仕組み化して、きちんと帰るようにした。「がんばらなくてもいいようにがんばる。能力の高い人が死ぬほど働く組織より、社員が世の中の役に立っている感じを得ながら改善を続けられる組織の方が長い目で見ると強い」。

 企業文化や理念の発展段階には「3つある」と考えている。第一に、こういうことをやるよ、とアナウンスされている段階、第二に、それが意識されて出来るようになってきている段階。絵本ナビの場合、残業しないなどが当てはまる。そして最終段階になると、経営者が理念を口にしなくても、当たり前に実行されているようになる。絵本ナビの場合、子どものために休みをとることがそうだ。

 オフィスは「例えば絵本の著者さんが遊びに行きたいと思ってくれる場を目指して」、写真のように暖かみのあるインテリアになり、「ユーザーやステークホルダーの共感を生んで、愛される会社」を目指す。来客を迎える時に立ち上がって挨拶するのは、事業に関わってくれる取引先への感謝の気持ちを常に示すためだ。

「企業の成長は経営者の器で決まるから、自分にも社員にもプレッシャーをかけるようにしている」。「ライバルは子ども」がキーワードだ。子どもの成長スピードの速さ、旺盛なチャレンジ精神を見習う、という意味だ。