税率以外の手立てを講じることで農業関係者の反発を抑え込むことができると、確信しているようだった。

 たとえば25年間でゼロにするとしよう。すると、1年間の引き下げ幅は1.54%にすぎない。

 急激な為替変動が起こった過去の現実を見れば、その程度の税率引き下げなど瑣末な変化にすぎないことがよくわかる。 

 1ドル120円から80円まで円が高騰した過去の例から考えてみよう。100ドルの米国産牛は関税込みで138.5ドルだが、円に換算すると1ドル120円なら1万6620円である。それが1ドル80円だと、1万1080円。税率が10.8%になったようなものだ。しかしだからといって突然、米国産牛の輸入が激増し、国内産牛の売行きが悪くなったなどという話はついぞ聞いたことがない。25年という長期の時間軸を持ちこめば、税率ゼロでも畜産農家へのショックを緩和することは十分にできるということだ。

 ショックアブソーバーは他にまだある。一定の輸入量を越えたら、政府が緊急輸入制限をするセーフガードだ。今でもこうした措置は講じられているが、関税ゼロ時代に適合するセーフガードの見直しは効果を発揮するだろう。少なくとも「国家百年の大計」と総理がいうTPPが、関税の数値だけで右往左往するのはお粗末な話である。

 TPPはアジアにおける新しい交易ルールになる。日中、日韓の現状を考えれば、日本が今ここでルールを作る側に立つことの意味は重大だ。日本がルール作りから脱落し、中国や韓国に出し抜かれるような事態は断じてあってはならない。

 4月16日、甘利TPP担当相が訪米する。異例中の異例といってよい。そこにはまもなくオバマ大統領を国賓として迎える日本政府の、並々ならぬ決意が見える。どう決着するのか。安倍政権の真価が問われている。