前回では、これまでの公務員制度改革の経緯を振り返るとともに、公務員の任免や昇進などの人事管理システムの特徴と問題点を整理した。後半の第2回では、今回の公務員制度改革の問題点を明らかにするとともに、霞ヶ関を変えるための改革案を示す。結論からいえば、新しい任免の仕組みでは、今以上に公務員の猟官運動が盛んになると危惧している。
今回の改革案のねらいと柱
明治大学公共政策大学院教授
1960年生まれ。1985年、東京工業大学大学院修了(工学修士)後、大蔵省(現財務省)入省。内閣府、外務省、オーストラリア国立大学、一橋大学などを経て、2012年4月から現職。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士、政策研究大学院大学博士。専門は予算・会計制度、公共政策・社会保障政策。著書に『財政規律と予算制度改革』(2011年・日本評論社)、『日本の財政』(2013年・中公新書)。
今回の公務員制度改革の目的について、稲田朋美担当大臣は、国会審議において、「内閣の重要政策に対応した戦略的人材配置を実現して、縦割り行政の弊害を排し、各府省一体となった行政運営を確保するとともに、政府としての総合的人材戦略を確立し、そして、私は、官僚の皆さんが一人一人、自分の仕事に誇りと責任を持って、省のためではなくて国益のために働く、国家国民のために働く、そういう公務員制度改革が急務であるというふうに考えております」(衆議院内閣委員会2013年11月22日)と述べている。
目的や「よし」である。では、どうやって目的を実現するのか。改革の中身を概観しよう。改革は多岐にわたるが、柱となるのは、①幹部公務員の一元管理、②内閣人事局の設置、③内閣総理大臣補佐官・大臣補佐官の3点である。
なかでも鍵となるのが、幹部公務員についての新しい任免システムである。法律では、「幹部職」と規定されているが、事務次官・局長・審議官クラスが対象で、霞ヶ関全体で約600人が対象となる(審議官の下には課長・企画官・課長補佐・係長などがある)。幹部職員となるためには、職務遂行能力をチェックする適格性審査をクリアしなければならない。そして、クリアした者は幹部候補者名簿に記載される。この名簿の中から、具体的なポストへの任命が行われる。
任命権者、すなわち大臣が任命を行うが、その際、あらかじめ総理大臣及び官房長官と協議しなければならない。また、総理大臣・官房長官は、自ら考える候補者を特定のポストに就けるために、任命権者に協議を求めることができる。国家公務員法上、公務員の任免権を持っているのは大臣であるが、現在でも、次官や局長等の人事については、内閣の人事検討委員会に諮ることになっている。今回は、これを法的に総理大臣・官房長官・大臣の三者の協議により決定しようとするものである。