4月11日、各省庁の幹部公務員を一元管理する内閣人事局の新設などを盛り込んだ国家公務員制度改革関連法案が参議院本会議で自民・公明・民主3党などの賛成多数で可決、成立した。安倍政権では、アベノミクスや憲法改正・集団的自衛権などに国民の関心が集まっており、多くの国民は公務員制度改革法など知らないであろう。

しかしながら、今回の改革法は、政治主導の名の下に恣意的な人事を容易にする可能性を含んだものである。霞ヶ関は不祥事などで常に批判されているが、公務員をたたけば事態が改善するわけではなく、改革は国家のガバナンスの問題として考えなければならない。本稿では、2回にわたり、国家公務員制度とその改革案の問題点について考える。第1回では、今回の改革に至った経緯を振り返るとともに、公務員制度の何が問題なのかについて考える。

4度目の公務員制度改革法案

たなか・ひであき
明治大学公共政策大学院教授
1960年生まれ。1985年、東京工業大学大学院修了(工学修士)後、大蔵省(現財務省)入省。内閣府、外務省、オーストラリア国立大学、一橋大学などを経て、2012年4月から現職。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士、政策研究大学院大学博士。専門は予算・会計制度、公共政策・社会保障政策。著書に『財政規律と予算制度改革』(2011年・日本評論社)、『日本の財政』(2013年・中公新書)。

 今回の公務員制度改革法案は、実は4度目の正直である。時計の針を戻そう。

 霞ヶ関の公務員は、業界への天下りや不祥事などで、常に批判されてきたが、改革はなかなか進まなかった。構造改革を旗印にした小泉政権でさえ、人件費を削減したものの、公務員制度改革には実質的に手をつけなかった。公務員制度改革という歴代の内閣ができなかった改革に果敢に挑戦したのが、第1次安倍内閣であった。同内閣は、2007年6月、国家公務員法等を改正し、能力実績主義を徹底するための新たな人事評価制度、各省による再就職あっせん禁止などの再就職規制の見直しを行った。

 更に、2008年6月、福田内閣において、国家公務員制度の抜本的な改革を進めるための国家公務員制度改革基本法が成立した。同法は、改革の基本理念や基本方針を定めるとともに、幹部人事の一元化、内閣人事局の設置、幹部候補育成課程の導入などの改革を盛り込んだ。しかも、同法は、当時野党であった民主党の意見を取り入れて原案を修正し、自民・公明・民主の賛成を得て成立したものである。