プロ生活8年目にして、ニューヨークヤンキースから7年間の年俸総額約160億円の契約をオファーされて、海を渡った田中将弘投手の移籍は、日本の野球ファンを沸かせた。さすがプロフェッショナルスポーツのスター選手は違うなと思った方は多いと思う。
しかし、これだけの投資をしてまで田中投手獲得に動いたヤンキースには、当然採算があってのことである。年間約23億円になる年俸だが、期待勝利数は毎年20勝以上、そこからくるチームへの経済効果の期待値は毎年25億円とも言われているらしい。もちろん期待以上の活躍をしたら、特別処遇などがあるのだろう。
実は、活躍の期待値やその出来栄えに応じて処遇されるということにおいては、私たち普通のサラリーマンの給与も全く同じであると考える。雇用主(会社)から受け取る報酬は、我々が提供する労働の対価である。この「報酬」と「労働」の間にはバランスがある。その点では田中投手も、私たちサラリーマンも同じであるべきだ。
ところが、これまで日本では、企業が同じ時期に新卒学生を一括採用し、定年まで雇用するという慣行できているため、給与を語る際に年齢や勤続年数が労働の価値を表すひとつの基準のように扱われてきている。そのためだろうか、社員の働きが会社にもたらす価値や期待値のようなものについて多く語られてこなかった(図1)。
そこで本連載では、給与が決まる仕組み、課題、改革の方向性について、海外企業との比較なども交えながら考えてみたい。なぜなら、企業としてグローバル展開し、世界で戦っていくうえでも、日本企業のこれからの給与決定方法はどうあるべきかは、喫緊の課題であるからだ。
季節柄、この4月に新社会人となった方々にとっても、自分の給与がどう決まっているのかに対する関心は高いはずだ。また、数年ぶりに話題となった「ベースアップ」に対する基準をどう考えたらよいのかついてお悩みの経営者の方々にとっても、日本における給与・報酬の決まり方について整理して考えてみる機会になれば幸いである。