過去2ヵ月以上、ドル/円相場は1ドル=95円から100円の狭いレンジを行ったり来たりする展開になっている。そうした相場の動きを見て、若い為替ディーラーの1人は「今のドル/円の為替相場を見ていると、永久にこのレンジから抜け出せないような気になって来る」と語っていた。
世界的な景気回復の期待から、主要な株式市場は軒並みはっきりした上昇傾向を辿っている一方、為替市場に目立った動きがないことは間違いない。
しかし、現在の相場展開はもう少し続くことになると見られるものの、それが長期間続くということではない。むしろ、現在の為替相場の動向は、今後動きが活発化する前のエネルギー蓄積期間、言うならば“嵐の前の静けさ”とでも考えればよい。
では、今後為替相場はどのように動くだろうか? 結論から言えば、中長期的に見ると、ドルは減価する可能性が高いと見る。その主な理由は3つある。
1つは、米国経済の本格的な回復には、まだ時間がかかりそうなことだ。米国経済の回復が、先行気味の期待に追いつけないと、どこかの段階で期待が剥落する可能性が高い。
2つ目は、米国の財政状況の急速な悪化によって、米国自身の信用力に陰りが出る可能性があることだ。現在、米国政府は多額の公的資金を使って、金融機関やGMなど大手企業の救済を行なっている。
それは、最終的に財政状況の悪化につながる。財政状況が悪化すると、米国自体の信用力に疑問符が付けられる。信用力に問題のある国の通貨が弱含みになることは、当然だろう。
そして3つ目は、信用力の低下の可能性を見越して、すでに「米国債離れの動き」が顕在化していることだ。中国やロシアなどは、すでに外貨準備高に占めるドルの割合を低下させている。ドル建ての米国債投資が敬遠されると、ドルに対する需要が減少する。それはドルにとってマイナスの要因だ。