最終局面を迎えつつある楽天とTBSの争いだが、この先には泥沼の戦後処理が待っていそうだ。
2008年4月の放送法改正で、テレビ局は認定放送持ち株会社への移行が可能となった。TBSは法改正と臨時株主総会での議決を受け、今年4月にテレビ放送部門やラジオ放送部門などを傘下に持つ認定放送持ち株会社に移行することが決まっている。
移行後はあらゆる株主の議決権が33%以下に制限されるため、楽天が支配権を手にしようにも、もはや制度上、不可能となる。同社の買収攻勢は完全に意味を失う。
注目すべきは、楽天が保有している、19.83%のTBS株の処理だ。提携に非協力的なTBS側の態度を考えれば、長期保有のメリットはほとんどない。
そのため楽天は、09年3月12日から4月1日までのあいだにTBSに株式の買取請求をするのではないかと見られている。
会社法では、重要な組織再編には株主総会の議決が必要で、反対した株主は、保有する株式の買取を、組織再編の20日前から請求できると定めているからだ。実現すれば市場での売却に比べて税務面でも有利なことがある。
問題は買取価格だ。会社法には明確な規定がないため、株式相場を参考にしつつも、相対での価格交渉となる。そして、決裂した場合は、法廷に持ち込まれる。
当初、楽天はTBS株式取得に際し、銀行からの借り入れをふくらませた。その結果、前年に14.9%だった自己資本比率は、05年12月期には4・6%まで急低下した。
しかし、その後1000億円規模の増資をするなどし、06年12月期には自己資本比率は14.6%に戻った。現在は800億円を超える現金も保有している。すでにTBS株式の評価損650億円の特別損失も計上しており、財務面ではひと息ついている状態だ。
こうした楽天側の事情を考えれば、納得いくまで法廷で争う可能性がある。05年から続く闘争は、戦後処理まで含めれば異例の長期戦となりそうだ。あるいは、戦後処理ではなく、第2ラウンドと表現したほうがいいのかもしれない。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 清水量介)