「今年の受験生が勉強会を始めた9月は、みんなはまだ生きることに精一杯で、ただ必死にもがいていました。そんな受験どころではなかった子たちが、できることから少しずつ取り組み始め、自分の将来につながる“受験”という課題に向き合う意欲を少しずつ取り戻していったのです」(佐藤さん)

 例えば、大好きなマンガ『ジョジョの奇妙な冒険』なら得意だというので、ホワイトボードいっぱいジョースター家の家系図を書いてみる、ということから集中力を取り戻す一歩を踏み出し始めた子もいたという。

「隠れるように生きてきた娘が大勢の前で話せるなんて…」
親も涙した子どもたちの意見表明

佐藤そのみさん(当時中学2年)は「大川は美しいところ。震災前から将来は大川小で映画を撮りたいと思っていた」と話した Photo by Y.K.

 6日の意見表明会は、自らの気持ちを口にできるまで回復した子どもたちのこれまでを、来場した人たちで受け止めるための場でもあった。

 意見表明を見守ったのは保護者や支援者、医療関係者、一部のメディアの計50人あまり。大川地区の住民たちが、受付や記録係として協力する姿も見られた。

 子どもたちのこれまでの3年間の心の内は、今回の意見表明に参加した当時6年生だった3人の言葉の中にも垣間見える。(参考:The Huffington Post 「大川小学校の校舎を残して」卒業生5人が意見表明【発言全文】

 意見表明を受けて発言するコメンテーターは、子どもたち自身が3年間にかかわった数多くの大人の中から、テレビ局の記者を指名した。

「人前で話すことやマスコミを嫌がっていたあの子たちが、“校舎を遺して”と発表するなんて、よほどの強い思いがあるんだと思う」

 そう遺族のひとりが感心するほど、5人の意見は、故郷や友だちへの強い絆を感じさせるものだった。

「こうやって大勢の人の前で話ができるなんて、これまで想像もしなかった。隠れるように生きてきたのが、こうやって成長できたところを見せてくれて、今日は奇跡のよう」

「友だちと家族の前でいろんな事を言えた姿が見られて、うれしかった。これが初めの一歩。これから先は、自分の思いとは違う気持ちを、人から向けられるかもしれないが、ぶれずに頑張ってほしい。弱音があれば、家でも言ってくれたら」

 意見表明に立ち会った母親たちも涙ぐみ、娘たちに向けてエールを送った。

 5人の意見は、周囲に確実に伝わっている。意見表明会後、高校生の新しい仲間が1人加わった。大川小で兄弟を亡くした子だ。