どんな時代でも生きていける「一生モノ」の自信をわが子につけさせるには、どうすればいいのだろう?と迷いを感じている親御さんに向けて、不定期でお送りしている開成学園校長・柳沢幸雄さんのインタビュー。前回より5回にわたり、開成高校硬式野球部を取材したベストセラー、『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』の著者・髙橋秀実さんとの対談を掲載しています。開成学園といえば、「東大進学者数全国ナンバー1」として知られる日本トップクラスの進学校。ところが、お二人の対談を通して見えてきたのは、「開成っ子」の意外すぎる一面でした。前回は、「自分らしさの飽くなき追求が開成イズム」というお話が出ました。今回は、トコトン「自分らしさ」を追求する開成っ子の「執着力」がテーマです。
「運動会中心に回っている学校」、それが開成
(たかはし・ひでみね)1961年横浜市生まれ。東京外国語大学モンゴル語学科卒業。テレビ番組制作会社を経て、ノンフィクション作家。『ご先祖様はどちら様』で第10回小林秀雄賞、『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』で
第23回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。そのほか著書に『TOKYO外国人裁判』『素晴らしきラジオ体操』
『からくり民主主義』『はい、泳げません』『やせれば美人』『結論はまた来週』など。
髙橋 こういったら大変失礼ですが、実は開成の校舎に足を踏み入れて最初に感じたのが「汚い」ということでした(笑)。学園祭か何かの準備をずっとしているような印象を受けたんです。
柳沢 ああ、それは運動会の準備ですね。開成では、毎年5月に行われる運動会の準備を1年間かけてやるんです。中1から高3まで学年を超えて、1組なら1組、2組なら2組と、組ごとに合計8つのチームに分かれて準備を重ねる。そして、運動会を仕切るのは高3の役目。彼らが競技指導も行います。1年かけて準備しなくてはいけないので、開成では高校2年と3年はクラス替えがないんですよ。そういう意味では、運動会を中心に回っている学校といっても過言ではないかもしれません。
髙橋 ずいぶん大規模ですね。どんな準備をするんですか?
柳沢 たとえば、畳24畳分の大きな壁画を作ったり、応援歌を作詞・作曲して、みんなで練習したり。準備は組ごとにやりますから、壁画の原画を作れる子、作詞や作曲ができる子が最低8名ずつ必要になるわけです。ほかにもパンフレットを作る係、庶務係、記録係、衛生係など、全員が必ず何らかの役割を兼任します。
我々が一番気をつけているのは、生徒たちになるべく早い段階で自分の“居場所”を見つけさせること。そして「これがやりたい」と思えることに出会わせることです。