どんな時代でも生きていける「一生モノ」の自信をわが子につけさせるには、どうすればいいのだろう?と迷いを感じている親御さんに向けて、不定期でお送りしている開成学園校長・柳沢幸雄さんのインタビュー。今回から5回にわたり、開成高校硬式野球部を取材したベストセラー、『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』の著者・髙橋秀実さんとの対談を隔日で掲載します。開成学園といえば、「東大進学者数全国ナンバー1」として知られる日本トップクラスの進学校。ところが、お二人の対談を通して見えてきたのは、「開成っ子」の意外すぎる一面でした。「エリートの卵」「神童」と世間からいわれる「開成っ子」の知られざる強みとは、一体どこにあるのでしょう?
「自分なりに」が開成イズム
(たかはし・ひでみね) 1961年横浜市生まれ。東京外国語大学モンゴル語学科卒業。テレビ番組制作会社を経て、ノンフィクション作家。『ご先祖様はどちら様』で第10回小林秀雄賞、『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』で第23回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。そのほか著書に『TOKYO外国人裁判』『素晴らしきラジオ体操』『からくり民主主義』『はい、泳げません』『やせれば美人』『結論はまた来週』など。
柳沢 髙橋さんが書かれた『「弱くても勝てます」』は、開成高校の硬式野球部が舞台になっていますね。実際に生徒たちの取材をされて、どんな印象を持たれましたか?
髙橋 印象的だったのは、みんな“自分なりの回答”をしようとすることです。みっちり中身の詰まった話が非常に速いスピードで繰り出されるので、メモが間に合わないことがしばしばありましたね。
エラーばかりしている子に「野球は苦手なの?」と聞いたら、「いいえ、“苦手”ではなくて“下手”なんです。下手と苦手は違います」と返ってきたり、「野球は好きですか?」という質問に、「僕は野球以外のことを野球と同じくらい長時間やったことがないので比較できない」と言う子がいたり。きちんと考えて自分の言葉で質問に対する答えを見つけようとする。その姿勢がとても好印象でしたし、素晴らしいと感じました。
柳沢 そうでしたか。まさに今、髙橋さんがおっしゃった「自分なりに」という姿勢を、開成では一番重視しています。「これをやりたい」「こうなりたい」と、生徒が自己選択ができるようになれば、我々の教育は終わったも同然。選択された生徒の意思に合わせたアドバイスは惜しまないけれど、「○○大学に行きなさい」というような指導は一切しません。だって自分の人生ですから。その結果、みんな“自分なり”に深く掘り下げて考える癖がついているのだと思いますよ。