前回(2月20日)から始まった全5回連載では、『自信は「この瞬間」に生まれる』を刊行され、ハーバードで「ベストティーチャー」に選ばれ続けた日本人教授、柳沢幸雄さんに「自信」の秘密を教えていただきます。
今回は、ハーバードの学生と東大生、それぞれの「自信」についてうかがいます。両大学で10年以上、学生を教えてきた柳沢先生から見た、ハーバードの学生と東大生の最大の違いとは?
ハーバードの学生と東大生のあいだに学力の差はほとんどない
私がハーバード大学と東大でそれぞれ10年以上にわたり教鞭をとってきた経験からいうと、両大学の学生のあいだには能力や学力の面でそれほど差はありません。むしろ、18歳で大学に入学する時点では、東大生のほうがすぐれているといってもいいでしょう。
能力の点で差がないにもかわらず、東大生はどこか自信がなさそうで、ハーバードの学生はいつでも自信満々です。授業をしていても、ハーバードの学生は躊躇なく手を挙げて発言します。
ハーバードに留学している日本人のあいだからは、「大したことを言っているわけでもないのに、どうしてあんなに堂々と話せるんだろう」という陰口にも似た声が聞こえてくることもしばしば。確かに教える側から見ても、結構いい加減なことを言っている人も多いような気がします。
「発言しない人=存在感ゼロ」とされるアメリカの社会のありかたから、自然とそうなるのかもしれませんが、両者の違いはどこから生まれるのでしょうか?
東京大学名誉教授。開成中学校・高等学校校長。シックハウス症候群、化学物質過敏症に関する研究の世界的第一人者として知られる。1947年、疎開先・千葉県市川市の母の実家で出生。1971年、東京大学工学部化学工学科を卒業後、日本ユニバック株式会社にシステムエンジニアとして勤務し、激務のかたわら、週15時間英語の勉強に打ち込む。1974年、水俣病患者を写したユージン・スミスの写真に衝撃を受け、化学工学を勉強すべく、東京大学大学院工学系研究科の修士課程・博士課程に進学。この頃、弟と一緒に学習塾の経営を始める。東京大学工学部化学科の助手を経て、1984年にハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科の研究員の職を得て、家族を連れ渡米。その後、ハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科の助教授、准教授、併任教授として空気汚染の健康影響に関する教育と研究に従事、学生による採点をもとに選出される「ベストティーチャー」に数回選ばれる。1999年、東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻教授に就任。2011年より現職。