求めているのは、執着力のある子

柳沢 のんびりとした風土は、伝統的なものだと思います。開成には現在62の部活動があって、ほぼすべての生徒が部活や課外活動に参加しています。運動部と文化部など、2つ、3つ掛け持ちしている生徒も少なくない。それに加え、運動会や文化祭など、あらゆる行事で中高生が一緒に活動しますから、先輩が後輩のロールモデルになるわけです。

開成の生徒が本格的に受験勉強をやりはじめるのは、だいたい高3の春から。5月の運動会が終わると同時にそれまで没頭していた課外活動をやめ、皆受験モードに入ります。そこから一気にスパートをかけて、ほとんどの生徒が希望するところへ合格していく。それを間近で見ているから、高2までは授業についていけさえすれば、部活動に専念して大丈夫なんだなと認識する。みんなめいっぱい部活や課外活動に打ち込んで、その後はエネルギーを勉強に振り向けるんですね。

髙橋 野球部の部員を見ていても、確かに集中力はスゴいですね。試合前のグランド整備に没頭しすぎて、試合時間になってもまだやっている子がいたり(笑)。逆に言えば、“適当に済ませて、適当にコミュニケ-ションをとって、適当に動く”といった「適宜性」に欠けているのかもしれません。

柳沢 そうそう、確かに開成の生徒に「適宜性」はあまりない(笑)

髙橋 野球部を取材をした時も、練習時間中にインタビューをするわけですから、こちらとしては「貴重な練習時間を奪って、申し訳ない」という気持ちがあった。でも、みんな投げられた質問に納得のいく回答ができるまで、しっかり向き合って話を続けるんですね。適当に済ませることはしないんです。何かに取り組むと、そのことにものスゴく集中する。

柳沢 開成には“集中して何かをやり遂げる”ことに長けた子が集まっているんです。開成の中学受験というのは、問題はさほど難しくないけれど、集中してやらないと時間内には解けない。我々もそういった執着力のある子供が欲しい。そういう能力があれば、学校のなかでもそれなりに自分の方向を見つけることができるし、必ず伸びていきますから。

髙橋 適宜性は社会に出てからでも身につけられるけれど、集中力は生来のものもある。成長過程の若い時期に鍛えるのがいいと思いますね。

柳沢 そうなんです。大人になると必然的にやらなきゃいけない仕事が増えるので、適宜性は自然と身につきます。だから、中・高の時代は集中力を磨くほうがいい。いろんなことに興味を持つこの時期は、やりたいこと1つ1つに集中するのが一番いいと思いますね。

次回の掲載は5月26日を予定しています。


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