「偉そうなことを言う前に、
俺を喜ばせてみろよ」
そしてもう1つの理由は、「どんな仕事でも、目の前の人を喜ばせることができなければ、その先はない」と常々思っているからです。
目の前の第一読者である編集者を喜ばせられないのに、その先の何万、何十万の人を喜ばせられるわけがない。長年漫画家をやっていれば例外があることも重々理解していますが、特に若い人は、そう思っておいたほうがいいでしょう。
僕が編集者の立場なら「そんな偉そうなことを言う前に、まずは俺を喜ばせてみろよ」と言いたくなりますし、その思いはきっとみんな同じはず。だから、僕は新人のころ、編集者のどんな要望にも応えようと必死でやってきました。
当時の作品を今になって読み返してみたとき、「ああ、やっぱり編集者の言う通りにしたのは失敗だったなぁ……」と作品的には思うこともありますが、自分がキャリアを積み重ねていく上では決して間違った選択ではなかったと思います。新人のころはそれが当たり前なのです。
これは何も漫画の世界だけの話ではなく、一般企業でも同じではないでしょうか。