その昔、東京湾でたくさん獲れていた鱸《すずき》は、鯛と並んで人気の高い、白身の高級魚でした。
特にこれから夏を迎える季節は、産卵を終えてやせ細った鯛に代わり、鱸が最ももてはやされた時期です。
江戸末期に書かれた魚の図鑑『魚鑑』にも、「その肉は即玉鱠にして、夏月の珍、これに過るものなし」と鱸の味が絶賛されています。
【材料】鱸…1/2匹/つま…適量/あさつき…3本/煎酒(または醤油)…適量/おろし山葵…適量
【作り方】 ①鱸は三枚におろして皮を剥ぎ。薄造りにし、皿に並べて刻み葱を散らす。煎酒とおろし山葵を添える。
※煎酒の作り方…鍋に酒1カップ(200ml)、梅干し1個、塩少々を入れて弱火にかけ、煮立ってきたら削りがつおを入れ、5~6分煮詰めて漉す。
年配の方の中には、鱸と言えば薄造りにして氷水で洗って身を縮ませ、砕いた氷に盛りつける「洗い」を思い浮かべる方が少なくないと思われますが、氷が手に入らない時代の江戸っ子たちも、鱸を生で食べることを好みました。
寛永20年(1643年)に刊行された『料理物語』には、スズキの調理法として、「さしみ、汁、やきても、なます」とあります。