おととい(11月24日)、英国政府は、景気刺激策として、VAT(付加価値税)の減税を発表した。総額200億ポンド(約2兆9000億円)、深刻な金融危機を受けて、英国経済を下支えするのが狙いだ。
VAT(Value Added Tax)は日本の消費税に相当する。内容は、現行の17.5%から15%に税率を下げるというものだけあって、先月の銀行への公的資金注入と同様、国民からの反応は概ね良好だ。
特筆すべきは、こうした政策の発表に当たって、首相自らが直接国民に訴えかける手法を用いていることだ。
前日(23日)、ブラウン首相は、英大衆紙「ニュース・オブ・ザ・ワールド」に寄稿して、事前に減税案を示している。
〈必要とあらば、手を差し伸べる〉(”I'll give help when you need it”)
こう題された手記は、低所得者層に向けて直接訴えかけるものとして、あえてタブロイド紙が選ばれたという背景がある。
「現在、家計で困難に直面しているすべての世帯に対して、私たちは手を差し伸べる用意があります。そして、政府はつねに皆さんの味方であることをわかってほしい」
こうした発表方法は、日本では考えられないことだ。これは、政府のメディア戦術の一環であり、前政権のスピンドクター、アラステア・キャンベルがタブロイド紙の記者であったように、英政府の常套手段なのである。
さて、話を戻そう。ブラウン首相は、24日の記者会見の中で、過去の日本の金融対策を引き合いに出し、名指しでこう批判している。
「わが英国は、日本のような悪い手本と同じ轍を踏んではならない。時間はない。少しの猶予もないのだ」