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2030年のビジネスモデル

不器用だけど一生懸命――沖縄の焼き肉店、キングコングが実践する、ゆがんだ社会や組織を治すヒント

齊藤義明 [ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]
【第19回】 2014年6月12日
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魚汁は命薬(ヌチグスイ)

 現在、コング丸には、精神になんらかの障がいがある人たちが5人乗っている。海に落ちたらどうするのだ、海上で発作が起きたらどうするのだ、とリスクを心配する声もある。だが、海では誰もが子どもにかえり無邪気な笑顔が自然に出てくる。みんなで釣った魚をさばいて作る魚汁はことのほか旨い。そんなことが、疲れきってしまった心、塞ぎこんでしまった心に効くのだろう。「魚汁は命薬(ヌチグスイ)」と仲地さんは笑う。

めっぽう腕の立つ自閉症の寿司職人

 コング丸での漁を終え、東京へ戻る前に、もう一ヵ所、砂川社長のお店に寄った。日本でおそらくただ一人の自閉症の寿司職人、津波古郷さんによる心を込めた握りを頂戴するためである。津波古さんが握るシャリの量は正確この上ない、少しだけ含める空気の量も絶妙と言われる。雑念のない集中力、旨いとの噂は本当だった。

彼が握るシャリの量は正確この上ない

 NSPはこれから先、障がい者雇用のみならず、刑余者を含む様々な立場の人を雇用することにも挑戦しようとしている。それも福祉施設のような特別な空間ではなく、普通に町にあるお店でやることが大事だと考えている。

 「いつからでも、どこからでもやり直せる、という言葉がありますが、今の日本において一度犯罪を起こしてしまった人は、二度とお天道様の下で働くことができないのが現状です。本当に罪を悔いてもう一度やり直したいと思う方に対して、その機会を提供したい。そしてただ働いてもらうだけではなく、できれば犯罪を犯してしまった当事者だからこそできる社会貢献を企業とともに行っていきたい」と仲地さんは言う。

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齊藤義明
[ビジネスモデル研究者、経営コンサルタント]

ビジネスモデル研究者、経営コンサルティング会社勤務。政策・経営コンサルティングの現場でこれまで100本以上のプロジェクトに関わる。専門は、ビジョン、イノベーション、モチベーション、人材開発など。

2030年のビジネスモデル

未来のパターンを作り出す企業は、はじめは取るに足らないちっぽけな存在だ。それゆえに、産業の複雑な変化の過程で、その企業はときに死んでしまうかもしれない。しかし個別企業は死んでも、実はパターンは生き続け、10年後、20年後、新しい現象として世の中に広がる。2030年の日本につながる価値創造のパターンとは何か。現在さまざまな領域でその萌芽に取り組む最前線の挑戦者たちとのダイアローグ(対話)。

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