
地政学リスクと在庫指標に振られつつも、9月はOPEC(石油輸出国機構)プラスの増産観測やイラク・クルド人自治区からの輸出再開で需給緩和期待が優勢になった。10月は米政府機関の一部閉鎖や米中摩擦の再燃が需要不安を強め、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)は60ドルを割り込んだ。足元は弱気材料がやや上回る展開だ。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)
10月に下落基調強まり
WTIは60ドル割れ
地政学リスク要因や米国と各国との通商交渉などを材料に一進一退が続いていた原油相場は、10月に入って下落傾向が強まり、1バレル60ドルを割り込んだ。
晩夏のころからの原油相場の動向を振り返ると、8月22日は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長による経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」での講演を受けて、ドル相場や市場金利が低下したことを背景に原油は小幅に買われた。
ロシアのラブロフ外相がウクライナとの首脳会談について「予定されていない」と早期実現に否定的な見方を示したことも強気材料だった。
25日は、ロシア産石油の供給懸念などから続伸した。米国による対ロシア制裁の強化や、ウクライナ軍によるロシアのエネルギー施設への攻撃でエネルギー供給が混乱する可能性が懸念された。
27日は、米エネルギー情報局(EIA)による週次石油統計で原油在庫の減少幅が市場予想を上回ったことが買い材料になった。米政権がロシア産エネルギーの輸入を続けるインドに対して25%の追加関税を発動し、合計で関税率を50%としてエネルギー供給の混乱が連想されたことが相場を押し上げたとの見方もあった。
次ページでは、9月以降の相場動向を振り返り、相場の先行きを予測する。