そして、「穴あきダムはどのような対策をしようとも閉塞(流木などで穴が塞がること)の恐れを解消することはできません。最上小国川ダムのように穴が小さい場合、閉塞の可能性は高い」と指摘した。

 またアユなどへの影響について、朝日田卓・北里大学教授は「県が言う『アユへの影響が少ない』ということは『影響がある』ということです」と語り、「穴あきダムは決して環境にやさしくはありません。これだけの清流をダムによる環境破壊の実験場にしないでください」と訴えたのだった。

 シンポジウムに出席した専門家は、いずれも県のこれまでの主張に疑問を呈し、ダムによらない治水(河道改修など)こそ真の地域の安心安全につながる、と指摘した。しかし、会場内でこうした専門家の貴重な見解に耳を傾ける地元住民や漁協組合員の姿はそう多くはなかった。実は、「参加したことがばれたら村八分にされてしまう」と、出席を躊躇する人たちが少なくなかったのである。

 もっとも、そうした圧力がかかるのは主催者側も事前に想定していたという。それで会場を地元・最上町以外に設定することも検討したが、「それもおかしなことだ」となったのである。

どうしてもダムでなくてはダメなのか?
県に河川整備を拒ませる「金山壮」の思い出

 シンポジウム終了後、「守る会」はダムに代わる治水案を提示した。赤倉温泉地区の河道改修を中心としたもので、同時に老朽化した旅館のリニューアルを図るなどして地域を再生する試案も作成した。

 こうしたダムによらない治水対策を求める真摯な声に対し、県は「大規模な河川整備はできない」と一蹴し続けている。その根拠として必ず持ち出されるのが、「金山荘」の一件だ。

 山形県は1988年11月、赤倉温泉街を流れる最上小国川左岸の護岸工事を実施した。その一環として河床を掘削したところ、温泉が噴出。25メートル離れた対岸の「金山荘」から、温泉の温度が10度も下がってしまったと訴えられた。