買収後も収益性に課題

 仮に当局が認めたとしても、ソフトバンクにとっては険しい道のりが続く。

 まず、事業の収益性である。スプリントとTモバイルの契約者は、所得の低い顧客を中心としたプリペイド契約が多く、収益性の高い後払い契約が圧倒的に少ない。

 また、携帯事業の競争力の源泉は、インフラ整備にあるが、清水憲人・情報通信総合研究所主任研究員は「現状では、両社が統合しても、年間の設備投資を賄うだけの利益を出す企業になれるわけではない」と指摘する。

 事実、Tモバイルは今年、45億ドル前後、スプリントは80億ドルの設備投資を計画しているが、両社のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の合計は、2013年で100億ドル程度しかなく、到底賄い切れない。

 今回、現金160億ドルを投じて買収したとすれば、ソフトバンクの純有利子負債は10兆円に達する見込み。それに対し、ソフトバンクのEBITDAは2.5兆円程度なので、収益力の実に4倍もの借金を背負うこととなるのだ。

 純有利子負債に対するEBITDA比率は、ベライゾンが2.1倍、AT&Tが1.5倍だから、ソフトバンクは厳しい。

 そもそもソフトバンクの格付けは、スプリントを買収した段階で、投機的水準に当たる「ジャンク債」扱いに引き下げられている。今回の買収資金については、銀行が面倒を見るだろうが、スプリントやTモバイルの収益性を高めなければ、さらなる格下げという憂き目に遭いかねない。

 つまり、買収に成功しても、その先に幾重にもハードルが待ち構えており、ソフトバンクが難しいかじ取りを迫られていることに変わりはない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)