「とにかく残念だ」──。ヤフーがイー・アクセス(6月にウィルコムと合併)の買収を断念した5月19日、キャリア関係者や取引先に失望感が広がった。買収発表から約2カ月後、急転直下ともいえる判断に至った背景には何があったのか。

わずか2カ月前に大々的な発表をしたにもかかわらず、イー・アクセスとの経営統合を中止したヤフーの宮坂学社長
Photo by Takeshi Kojima

 ヤフーは表向き、「ヤフーはサービス、イー・アクセスはインフラというそれぞれの強みを生かした協業の形で事業を進めていくことが望ましいとの結論に至った」と説明しているが、これは事前に分かっていたことであり、納得する向きは少ない。

 今回のキャリア買収は、国内で成長を目指すヤフーがインターネット広告事業を伸ばすための大きな一手と位置付けられていた。加入契約約1000万件、携帯ショップや量販店など約3000店舗の「拠点」を取得。ここで端末を販売し、Eコマースなどのネットサービスの利用を広げていく狙いがあった。

 だが、親会社のソフトバンクに3240億円という多額の現金を支払うにもかかわらず、買収後の具体像が示せなかったことで株価は低迷。買収断念の発表直前には、発表前から約3割も下落した。

 買収断念の決定に大きな影響を及ぼしたのは、ソフトバンク側の事情であろう。宮坂学社長以下、ヤフー経営陣は、買収に向け着々と準備を進めていたとされるが、ヤフーの取締役は、宮坂氏を除く4人のうち3人が孫正義社長を含めたソフトバンク系幹部。

 そのソフトバンクにとって、この2カ月の間に劇的な環境変化が起きていた。