税は立場によって利害損得が複雑で、皆が納得する税制は難しい。そこで日本は税制に関して「公平・中立・簡素」をうたい文句にしてきた。バランスを欠く税制はよくない、という考えだ。

 政府が掲げる税と社会保障の一体改革は、社会保障制度を維持するために増税をお願いする、ということである。社会保障の予算を切り詰め、サービスは低下するが、それでも財政は厳しいから負担増は避けられない、という身もふたもない方針だ。そこまで日本の財政は傷んでいる、ということである。

 国家財政の非常時に、なぜ法人税だけが優遇されるのか。

 安倍政権は16日決めた「骨太の方針」に、法人税の実効税率を現行の35.64

%(東京)から20%台に引き下げる、と盛り込んだ。

 法人税率を1%下げると国庫は5000億円の減収になるという。10%下げれば5兆円だ。来年消費税を10%に引き上げても帳消しになりかねない税額である。

 法人税を払っているのは黒字に潤っている大企業だ。トヨタでも昨年まで払えなかったのだから、法人税は優良企業への課税といっていいだろう。

 日本で利益を稼げるのは、日本社会の支えがあってのことで、儲けの一部を社会に還元することは企業の使命、という思想に裏打ちされている。

 21世紀に入って日本では企業が儲けても従業員の取り分は減り、給与総額は縮小している。反対に企業の内部留保や株主への配当は膨らんでいる。グローバル競争にさらされる企業の多くは、社会への還元を抑制し、経営者・資本家に配慮する経営へと舵を切った。

 法人税の引き下げはこうした流れを国家レベルで進めることである。

 庶民の税負担を重くし、儲かっている企業の言い分に従う政策だ。危機的な財政状況で皆が我慢を強いられているとき、経団連のわがままを聞くことがはたして妥当だろうか。税制改正のポイントはここにある。

苦しむ赤字法人に課税も

 異論は財務省内部からも上がっている。

「経団連の言い分は分かるが、この局面で法人税減税を進める大義はない。首相は取り巻きに経産省出身者が多く、経済界の言い分が反映しやすい」(財務官僚)