政府税制調査会からも「法人税を引き下げるなら、租税特別措置など既存の優遇措置も同時に見直すことが必要になる」という声が出ている。政府税調の太田弘子座長は法人税減税に理解を示しながら「多くの企業に薄く広く税を負担してもらうよう検討する」と言っている。

 そこで登場するのは赤字企業への課税だ。利益への課税では赤字企業は徴税されない。資産や従業員の数など「企業の規模」に課税する外形標準課税が浮上した。いわゆる「赤字法人への課税」だ。

 税金ゼロはトヨタだけではない。政府のてこ入れで再生したJALは、世界一の高収益エアラインになって今も税金を払っていない。公的資金で生き延びたメガバンクも数年前までは税金を免れていた。赤字法人の課税が実現すれば、こうした企業からも徴税できる、というのである。

 ところが中小企業が反発している。課税逃れの大企業と違い、中小企業は本当に苦しいから税金を払えない。消費税も実際に納税する義務があるのは消費者ではなく事業者だ。多くの中小零細企業は、消費増税を価格に転嫁しきれず負担増になっている。そんな時に、法人税を軽くするしわ寄せで赤字企業課税まで導入されたら生きていけない、というのである。

「儲かっているのに税金を払わないで済む仕組みを変えなければいけないのに、大企業に手を出せないから赤字企業までというのは天下の悪政だ。中小企業はもっと怒るべきです」

 立教大学の山口義明教授はあきれている。

 租税特別措置は民主党政権の時に見直す動きがあった。経済界の反対が強く、実現しなかった。経団連など財界の有力者は「既得権にメスを入れる改革を」などというが自らの既得権である税の優遇は手放さない。

 数兆円規模になる法人税の実効税率の引き下げは、減税財源が見当たらないまま、骨太の方針に書き込まれた。

「法人税が下がれば、企業が元気になって税収が増える。増えた税金を財源にすればいい」。そんな気楽な言い分が経済界に広がっている。不確かな楽観論を根拠に、自分の儲けだけは確実に増やす。日本の財界人はいつから自分の庭先しか考えなくなったのか。

 税の歪みをますます大きくする法人税が「成長戦略」という国家に未来はあるのだろうか。