正直、買った方が断然安い燻製に
なぜか現代人がいまハマっている

 一通り燻製について調べたところで、お知らせにあった港区青山にあるレンタルオフィスへと向かった。そこで、協会の設立を祝うイベントが開かれるという。

 このたび発足した日本燻製協会の代表理事は燻製ニストの佐藤暁子さん(38歳)だ。集まったのは佐藤さんの知り合いを中心に25人。燻製には、温度の違いによって「熱燻」「温燻」「冷燻」とあるそうで、この日はその中でも最も簡単な「熱燻」でゆでたまごを燻製するパフォーマンスが披露された。

 用意された材料は以下の通りである。

・めんつゆに漬けて味付けしたゆでたまご
・市販の燻製専用鍋
・ガスコンロ
・アルミ箔
・ほうじ茶(または、サクラの木などを細かく切った市販のチップ)

 作り方はいたって簡単だ。専用鍋にアルミ箔を敷き、その上にほうじ茶をひとつかみのせる。これは出がらしを乾燥させたものでも良いそう。その上に付属の網をのせ、あらかじめキッチンペーパーなどで水分を拭き取ったゆでたまごをのせる。鍋を火にかけ、縁から白い煙が出てきたら、弱火にして10分ほど置く。火を止めてからも、さらに10分ほど待てば、燻製ゆでたまごの完成である。

佐藤さんお手製のサーモンを燻製するための装置。棚はホームセンターで買ったステンレス製のもの

 ただし、サーモンなど大モノを燻製しようと思えばこう簡単にはいかない。完成までに2、3時間はかかる上、温度管理も難しくなる。という訳で、会場に集まったマニアからは、「ぶっちゃけ、スモークサーモンなどは買った方が安いです」という、ぶっちゃけ過ぎな意見も飛び出した。

 それを聞きながら、ならば、現代人はなぜ好んで燻製などするのだろうか、と考え込んでしまった。

 おっしゃる通り、燻製は手間ひまがかかる。経済効率で判断するならば、買ってきた方が断然安い。食品の保存性を高めるといっても、今は冷蔵庫があるのだし、スーパーへ行けば、いつでも、何でも簡単に手に入るのだから、現代においては食品を保存しておく必要性がそもそもあまりない。

 香りを付けたければ市販の燻製シートでくるむという方法もある。合理的に考えれば考えるほど、現代人が燻製をする意味がわからなくなる。後日、その点を含めて佐藤さんにインタビューすることにした。まずは、日本燻製協会を立ち上げようと思った理由からだ。

「なんか、ちょっとしたブームかなと思いまして」と彼女は言う。

「燻製がブームなんですか?」

「統計などはありませんけれど、感じるものがあったんですよ」