株式、債券、土地、商品……、世界中のありとあらゆる資産の価値を奈落の底に突き落とした米国発の金融危機。ただし、「これはまだ序章に過ぎない」というのが、市場関係者のコンセンサスです。
バブルが生じていたという意味では、BRICs、NEXT11、VISTAブームに沸いた新興国もまたしかり。日本で売られている人気の「海外投資信託」を徹底調査したところ、「この国はどこだっけ?」という国々へ巨額の資金が流れ込んでいました。FXの対象となっていた通貨も、終焉を迎えています。
アイスランド、ハンガリーなど、とうてい持続不可能な高金利で投資を呼び込んでいた8ヵ国は、すでにギブアップ。IMF(国際通貨基金)に支援を要請しましたが、次なる恐怖はまっとうな経済運営をしていた新興国の実体経済への“危機”の伝播です。
テロに見舞われたインド、空港が占拠されたタイ、不法ストが頻発しているベトナムほか、不安定な社会情勢のなか、新興国が危機に見舞われれば、人類史上、類を見ない世界大恐慌に陥るのは必至です。
では、もし大恐慌が起こったら、いったいどの国が“TSUNAMI”に飲み込まれるのか。本邦初公開の本特集のランキング、6ヵ国レポート、40ヵ国の経済事情が、そのヒントを与えてくれるはずです。
執筆にご協力いただいたのは、それぞれの地域のプロフェッショナルの方々。これだけ多くの国々の経済の現状が一同に会した資料は、そうそうありません。あらゆる新興国の未来を占ううえで、「永久保存版」にしていただければ幸いです。
世界的な景気後退が進むなか、経済が沈まないためには、何より政治の舵取りが決め手となるでしょう。藤原帰一・東京大学大学院法学政治学研究科教授に緊急寄稿をお願いし、先行き不透明感極まる政治を徹底分析していただきました。
数々の新興国の滑落が懸念されるなか、やはり最後の砦となるのはGDP(国内総生産)で第3位に躍り出ることが確実視される中国。欧米の先進国に匹敵する4兆元の内需刺激策が功を奏して、どん底に落ち込んだ株式市場は反転するのか。
もし、効果が発揮できなければ、国の分裂など社会不安が起こることは必至。徹底した現地取材で、その実効性を検証しています。プロ転向を表明したオリンピック柔道・金メダリストの石井彗選手ばりの“粘り腰レポート”にご期待下さい。
今でも世界の株価が暴騰・暴落を繰りかえすなど、危機に終わりは見えません。果たして危機はどこまで続くのか、各人各様のご意見を頂戴できれば幸いです。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 佐藤寛久)