建築コスト上昇が深刻化

 背景には、アベノミクスによる景況感の改善や、東京五輪需要がある。また日銀の金融緩和で国債の利回りが低下する中、生命保険会社などがオフィスビルや賃貸マンションなどの不動産投資を積極化していることも後押ししている。

 こうした中、オフィス賃料も上昇に転じ始めた。

 オフィスビル仲介の三鬼商事によれば、オフィスビルが多い東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィスビルの平均賃料は、今年5月末時点で5年5カ月ぶりに前年同期比でプラスに転じた。

 東日本大震災以降、賃料が高くても耐震性能や防災設備に優れる最新のビルへの移転ニーズも高まっている。

 実際、今年6月11日に開業した虎ノ門ヒルズのオフィスは「開業前から満室となった」(森ビル)と好調だ。

 不動産サービス大手のシービーアールイーの高橋宏和フレッド・エグゼクティブディレクターによれば、「今年の新規供給については8割以上のスペースがテナントを確保している。空室率の低下とともに、賃料上昇はさらに加速するだろう」という。

 しかし、不動産業界がこうした市況回復の追い風を十分に受けているかといえば否である。

「復興需要の影響で建築コストが5~6割上昇しており、再開発がストップしている案件が幾つも出てきている」(大手不動産幹部)

 地価高騰に加えて、資材価格、人件費のトリプル高で建設コストは上昇の一途だ。

 建設コストの上昇分を借り手や買い手に転嫁することは難しく、「仕事はあるが手が出せない状態」(業界関係者)。

 光が差し込み始めた不動産業界だが、今後も建設コストの上昇が改善する可能性は低い。不動産業界にとっては、需要回復を商機につなげられない、消化不良の状態がしばらく続きそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)