2月12日、中国は予想より早く、2度目の預金準備率引き上げを決定、25日に実施した。これを受け、23日の上海総合指数は一時2%超下落。あおりで日本の株式市場も軟調となった。
緩和姿勢を堅持する米欧を尻目に、中国が引き締め姿勢を強めている理由は明白である。
まず依然収まらない不動産バブルと、その資金源である銀行貸し出しの急増。1月の銀行新規貸出額は、当局年間目標の2割近くに当たる1兆3900億元に及んだ。強力な窓口指導が行われなければ、過去最高を記録していた可能性が高い。昨年は、窓口指導でいったん沈静化した後に再び急増に転じており、なお予断を許さない。
物価も上昇傾向だ。1月のインフレ率は1.5%だが、「食品価格は2.4%上昇しており、政府当局の懸念はそうとう強い」(柯隆・富士通総研経済研究所主席研究員)。
さらに、賃金上昇の動きもある。中国では大学新卒者などの就職難が問題となる一方で、製造現場では今、労働者不足が深刻化しつつある。2月1日には江蘇省が最低賃金を13%引き上げ、広東省、北京、上海、重慶など他地域でも引き上げを検討中だ。
これらから年央、早ければ4月に利上げに踏み切るのではとの観測が強まっている。「CPIが預金金利(2.25%)を上回るようなことになると、利上げも想定される」(細川美穂子・みずほ総合研究所アジア調査部中国室研究員)。
1月の1度目の預金準備率引き上げ時には、世界のリスクマネーが収縮した。利上げとなれば、各国の株式市場、商品市場が大きく揺さぶられるのは必至だ。
「国内株式市場や企業業績への配慮から、上期は利上げの余地は大きくない。引き続き準備率引き上げと窓口指導で様子を見るのではないか」(柯主席研究員)との見方はあるが、“マイルド”な手段でどこまで抑え込めるか。
春節明けとなる3月の銀行貸し出しと物価動向、そして同月開催される全国人民代表大会での議論に要注意だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)