虚偽登記の衝撃
最初の出会いから6ヵ月ほどかけて交渉を重ね、6億円のキャッシュを用意して、いよいよ決済の日が近づいてきた。
その朝、私は前夜の酒席が明け方まで続いたこともあり、出社したのは午前10時過ぎだった。
「世田谷区内の物件、今朝、決済が完了しました」
取引を任せていた部長が、意気揚々と報告してきた。
「お疲れさま」
世田谷区池尻の、渋谷にも近い好立地。この土地で、また次の自社ブランド物件のプロジェクトがスタートできる。私自身、次の東証上場に向けて勢いがつくプロジェクトだと感じて満足だった。
ところが、数時間後のことである。
「大変です。池尻の土地、まったく知らない仮登記が打たれていました」
担当の部長が青ざめた顔で駆け寄ってきた。
「なんだそれは!」
虚偽登記に騙されたのだ。あまりのことに、私は声を荒げた。