安倍政権が農協に照準を定めたワケ

 民主党の菅政権は、農協を懐柔しようとして、規制改革会議が検討しようとした農協の改革案を潰した。しかし、怖いものがなくなった農協は、TPP反対に突き進んだ。政治的な統治能力に長けた自民党の安倍政権は、TPP推進のため、農協改革をぶち上げた。TPPか農協解体かのどちらかを迫られれば、農協に選択の余地はない。今回の規制改革会議の提案でも、これまで経済界が要求してきた株式会社の農業参入についての規制緩和は、意外なほど農協の抵抗なく実現された。

 農業衰退の原因である減反政策を無くせば、農業は発展できる。安倍総理は、減反を廃止しようとしたのだが、これはとんでもない思い違いだった(“戦後農政の大転換「減反廃止」は大手マスコミの大誤報”参照)。農協と調整した自民党農林幹部によって、生産調整(減反)は維持されたのである。2月の衆議院予算委員会で、生産調整が必要だとする自民党農林幹部の発言と減反廃止という自身の発言の食い違いを指摘された安倍総理は、わかりやすく説明しただけだと、発言を撤回した。農協の力を削げば、減反も廃止でき、農業を成長産業に育てることができる。

農協にとってはとんでもない改革案

 内外の投資家は、アベノミクス第三の矢のうち、とりわけTPPと農業に関心を示している。農業の専門家である私に、農政改革の解説を求めてくる投資家が多い。TPPと農政改革がうまくいかなければ、投資家は日本株を売るようになる。それは、安倍政権の支持率低下に直結する。

 戦後政治における最大の圧力団体である農協には、どの政権も手をつけられなかった。検討していることが伝えられるだけで、農協から大変な政治的圧力が加えられてきた。河野一郎農林大臣も小泉純一郎総理も、断念させられた。しかし、5月22日に政府規制改革会議がまとめた安倍政権の農協改革案には、農協にとってはとんでもないことが提案されていた。

 農協組織は農産物販売や資材調達を行う経済事業、金融を行う信用事業、各種保険扱う共済事業の3事業を一つの事業体で併営している。さらに各事業が全国レベル、都道府県レベル、地域レベルの3層構造となっており、全中が農協組織全体を統括し、全農が経済事業、農林中金が信用事業、全共連が共済事業を全国レベルで管轄する体制になっている。