使われているのは光学と画像処理技術。近赤外光のレーザーを血液に照射すると、光を吸収して熱膨張するが、このときにわずかに発生する超音波を検出し、3次元の映像に再構成する仕組みだ。

 この研究には、政府も注目している。政府の総合科学技術・イノベーション会議が6月に発表した、失敗するリスクはあっても、社会を変える可能性のある“夢の研究”を後押しする革新的研究開発推進プログラム(略称・インパクト)。12人の研究者に5年間で計550億円を支援するプログラムだが、その研究者の1人に、PATを担当する八木隆行・総合R&D本部上席担当部長が選ばれたのである。

 PATについて、キヤノンCTO(最高技術責任者)の生駒俊明副社長は「臨床現場で活用できるかどうかの検証はこれからだが、MRIやPET検査に匹敵する技術。人体にも無害で、世界の医療現場に広がる次のヒット商品になる」と期待を込める。

 デジタルカメラ、複写機に続くヒット商品が生まれない──。

 1996年にデジカメを商品化して以降、キヤノンが20年近くにわたって悩まされ続けてきた課題である。

 新規事業が育たず、2本柱に頼る事業構造が変わらないと長年指摘されながらも、キヤノンが優良企業として評価され続けてきたのは、その2本柱があまりに優秀だったからだ。