30年前、一軒の寿司屋がはじめた回転寿司チェーン「スシロー」。利益を二の次に、ひたすら「味」にこだわり続けた結果、業界トップ、年商約1200億円、年間来客数のべ1億2000万人の国民的企業に成長しました。はげしい競争を勝ち抜いてきた「スシロー」の仕事哲学・商売哲学をまとめた本『まっすぐ バカ正直に やり続ける。』から、一部をご紹介していきます。
100円で最高のネタを出すために、
“1ミリ”ずつムダを削り続ける。
「値打ちのある商売をしようや」
これが、スシロー創業者・清水義雄の商売哲学でした。
高くておいしいのは当たり前。
いくら安くても、マズければガッカリ。
どちらにも、「値打ち」はない。
「こんなにおいしいのに、この値段でいいの?」とお客様に驚かれたときに、はじめて「値打ち」がある、というわけです。
だから、スシローでは創業当時から「原価率50%」。
お客様からいただいたお金の半分は「ネタ」でお返しすることを原則にしたのです。
これは、“非常識”な選択です。
外食チェーンでは原価率30%台が常識。そうでなければ、利益を出せないからです。
だから、原価率50%で持続可能なビジネスモデルをつくるには、“非常識”なほどの工夫をしなければなりませんでした。私たちは、“1ミリ”ずつムダを削り続けるような仕事を延々とやり続けたのです。
たとえば、寿司の廃棄率。
回転寿司は、予測ビジネスです。
お客様が来店されたときに寿司がレーンを流れてなければ、お客様に怒られてしまいます。しかし、むやみに寿司を流すと廃棄率が高まって、ヘタをすると、それでなくても少ない利益が吹っ飛んでしまうこともあります。だから、どのネタを流せば手に取っていただけるかを正確に予測することが、このビジネスの肝になるのです。
だから、当時、寿司を握っていた私は、廃棄量が多かった日には、清水に手厳しく叱られたものです。
「寿司を捨てるのはカネをすてるのと同じ。どんなに一生懸命働いたって、儲けにならんかったら、寝とったほうがマシや。もっと、お客様を見て寿司を握れ」
そのため、寿司を握りながら、どのようなお客様がどのような寿司を手にされるのかをじっと観察しました。そして、予測の「勘」を磨いていったのです。
たとえば、「30~40代の女性が来たら貝類」「男性が来たらマグロとハマチ」「お子様ならエビとサーモン」などと客層ごとに好みのネタを把握して、来店されたらそのネタを流すようにする。時間帯によっても「食べられるネタ」と「食べられないネタ」がありますから、それを意識しながら握る。そんな「経験知」を磨くことで、廃棄率を下げる努力をひたすら続けたのです。