28日に約26年ぶりの7000円割れを記録し、リーマンショック以降、大幅な下落を続けてきた日経平均株価。この予想を上回る下落は、各企業の財務状況に非常に大きな影を落としている。――それは「株式持合い」による損失。企業によっては、その損失額が当期の利益のほとんどを食い潰してしまうほどの規模にまで膨らんでいるところもある。第2四半期決算(9月の中間決算)において、企業が続々と保有株の損失を計上。業績下方修正の発表が相次いでいるのだ。
先週22日、その象徴となる出来事が起きた。投資ファンド「スティール・パートナーズ(以下、スティール)」が、同社が筆頭株主を務めている「江崎グリコ」に対し、株式持合いによる損失の対処を要請したのである(スティールのプレスリリースはこちら。
評価損で利益のほとんどを消失!?
業を煮やしたスティールが反撃
その損失の状況を詳しく見ていこう。
江崎グリコは近年、有価証券投資を進めてきた。この有価証券投資というのは、他社の株式を保有すること。例えば、下記のような会社である。
・日清食品
・大正製薬
・東京放送(TBS)
・ダスキン
・ハウス食品
その多くは、純粋な投資目的のものではなく、いわゆる「持ち合い」的要素が強いものと思われる(ただし、江崎グリコ側は「持ち合い」であるとは正式には認めていない)。そして、それらは軒並み株価が下落し、2008年3月期には12ヵ月で約36億円の評価損が発生。さらに、2008年第2四半期決算においては、約22億円の評価損を計上したことを発表している。
この事態を受け、同社の筆頭株主(発行済み株式の約11.8%を保有)であるスティール・パートナーズは、江崎グリコに対し書簡を送付。株式持ち合いの説明責任とともに、損失の対処を行なうことを求めているのである。これにはスティール自身も、保有株の含み損を抱えているという事情もあるだろう。
しかし以前からスティールは、株式持ち合いを削減するよう求めてきた経緯がある。そして今年2月には「企業価値向上のための提言」と題した経営戦略改善の提案書も提出している。だが、江崎グリコはそれを拒否。自らの経営戦略のほうが有効であるとして、「株式持ち合い」を続けてきたのである。
しかし、その後に起こった株価の急落で、保有していた持ち合い株に大幅な含み損が発生。同社の財務状況は一気に悪化してしまう。
江崎グリコが発表した10月20日付けのIR資料「業績予想修正に関するお知らせ」では、当期の純利益予想を23億円→2億円と大幅に下方修正している。21億円も利益が減少してしまっているのだ。この金額は、持ち合い株の評価損(約22億円)とほぼ一致する。当期の純利益を吹き飛ばしてしまうほど、持ち合い株が損失を生んでしまったことになる。